中国で「住宅格差」が深刻化、バブル再燃の上海と沈みゆく地方都市上海では「無限の上昇」といった不動産神話まで生まれている(著者提供)

新型コロナウイルスの影響で、住宅を手放す中国の一般家庭が増えている。競売にかけられてもなかなか地方都市では売れない状態だが、一方で上海では住宅価格が急騰している。上海が独り勝ちしている理由とは何か。(ジャーナリスト 姫田小夏)

コロナ禍で急増? 住宅を手放した人々の波乱の人生

 中国で住宅を手放す人が増えている。借入金の返済ができないなどの理由で、銀行が差し押さえて強制売却する競売物件が増えているのだ。新型コロナウイルスは住宅ローンを組んでマイホームを購入した中国の一般家庭をも直撃している。

 中国ではアリババ集団の「阿里拍売」などが各地の裁判所とリンクする競売サイトを運営している。「阿里拍売」では12月14日時点で登録されている住宅件数が134万2850戸だったが、1月21日には137万4981戸に増えた。わずか1カ月強で3万2131戸も増えた計算だ。

 この競売サイトでは、さまざまな競売物件が閲覧できる。聞いたこともないような土地に建てられた豪華なタワマンや、入居が進まない巨大マンションなどもある。室内画像をクリックすると、起き抜けのままの乱れたベッドや、散乱した私物、扉には差し押さえの貼り紙、果ては、資産調査に来る破産管財人まで映り込んだものもある。こうした生々しい画像からは、所有者の売り急ぎが見て取れる。熱狂的な“不動産信仰”に取りつかれたものの、結局住宅を手放した人々の波乱の人生の一端でもある。

 中国には4億2000万の世帯があるといわれるが、多くの世帯が「いつかは大都市のように値が上がる」と期待して住宅を購入した。今や中国の持ち家率は89.68%(西南財経大学調べ。なお日本は約60%)だというが、このコロナ禍で、一部のサラリーマンや事業者は職や事業を失い、住宅ローンの返済が滞るという厳しい局面に立たされている。中国における個人向け住宅ローン残高は、2020年8月末で28兆元(約448兆円)、ローン契約者数は7000万人に上っている(中国人民銀行『中国貨幣政策執行報告』、2020年9月15日)。