朝日新聞のマニラ支局長などを経て2009年に単身カンボジアに移住、現地のフリーペーパー編集長を務めた木村文記者が、カンボジアのファッション文化についてレポートします。
今のお手本は”韓流”
ある日の昼休み、カンボジア人の同僚が熱心に携帯電話で動画をみている。何かと思ったら、韓国のポップス歌手のプロモーションビデオだった。ドラマからポップス音楽まで、今、カンボジアの若者は、「韓流」に夢中だ。
車内でDVDが放映される長距離バスでも韓国ポップスが延々と流れる。不治の病にかかった韓国人教師と、ちょっとドジなカンボジア人女学生の悲恋――という韓流ドラマ顔負けの歌謡曲がヒットしたりもした。その流れに乗って、ヘアメイクやコスメ、ファッションも韓流が若者たちのお手本になっている。
ちょっと前まで、カンボジアの流行を左右していたのはタイのテレビ番組だった。インターネットやスマートフォンが普及する前だったので、情報入手手段がテレビに限られていたこともある。今や、テレビは情報源としての優先順位は低い。この国の十代の若者が圧倒的にはまっているのは、フェイスブックだ。
インターネット上の「フェイスブック」に関するデータを調査分析しているソーシャルバンカーズによると、カンボジアで登録されているフェイスブックのアカウント数が、8月初めで約66万を超えた。同社によると、この半年でアカウント数は約16万増えたという。その9割が16歳から34歳までの利用者だ。
カンボジアオリジナルの本格的ファッション誌も創刊

「ネットの影響で視野が広がり、おしゃれな人たちが増えてきたのは確か。でもまだファッションで個性を表現するところまではいっていない。カンボジアのファッションシーンはまだまだ未成熟です」と、話すのは、本格的ファッション誌「ソブリン」のリ・ソウデン編集長(24)。昨年10月に創刊した、カンボジアで初めての(と、私は言っていいと思う)本格的ファッション誌だ。
「ソブリン」は、スペインの「マンゴー」、マレーシアの靴ブランド「VNC」などを取り扱うカンボジアのアパレル会社「ソブレイン」を母体として発行されている。1冊2ドルと、この国では高めだが、カンボジアのトップモデルを使い、洗練された構図で撮影されており、クオリティの高い美しい誌面をつくっている。
次のページ>> カンボジア人モデルによるファッションショーも開催!
|
|