ユーロユーロ圏の物価情勢が直面している「未曽有の危機」の正体とは(写真はイメージです) Photo:123RF

通年で最悪となった
ユーロ圏の物価情勢

 ユーロ圏の物価情勢が未曾有の悪化に直面している。12月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)は前年比▲0.3%と、8月から5カ月連続でマイナスとなり、リーマンショック直後の2009年6~10月以来の動きを記録している。

 通年で見れば2020年は▲0.3%であり、これまで最悪だった2014年の▲0.2%を更新している。2020年の物価情勢は過去最悪だったという言い方もできる。こうした物価低迷が原油価格の落ち込みに引きずられた動きであることは確かであり(図表1参照)、それだけが原因ならば今年後半以降は安定したプラス軌道に復帰している公算は大きい。

「一過性の動き」とは
言い切れない雰囲気

 だが、図表1に示されるように、年央からエネルギー以外の鉱工業財もマイナス寄与に転じている。これまでエネルギー以外の鉱工業財がマイナス寄与になることは稀で、あったとしても小幅マイナスが2カ月連続見られた後、すぐにプラスに復帰するのが普通だった。12月時点では、小幅ながらも5カ月連続でマイナスが続いている。

 サービスや食料、アルコール、タバコなども低迷しており、一概に「原油価格急落を受けた一過性の動き」とも言い切れない雰囲気はかなり強い。1月22日に開催されたECB政策理事会の声明文では、「2020年におけるHICP低迷は『原油価格急落(current energy price dynamics)』やドイツにおける『時限的な付加価値税減税』など、一時的な要因による押し下げに寄与された動きであって、その剥落に伴い今後数か月(in the coming month)でプラスへ転じる」との見通しが示されている。

 だが一方、観光・旅行業を中心とする需要の弱さや賃金の低迷、そしてユーロ高を踏まえれば、物価の趨勢自体は抑制された状況が続くとの見通しも示されており、予想される将来にわたって2%到達はかなり難しいであろうことを認めている。

 そうした実績ベースの動きだけではなく、期待ベースのインフレも不安な動きが続いている。5年先5年物インフレスワップフォワード(5年先5年物BEI)で示されるような市場ベースの数字はもとより、比較的安定感のある調査ベースのインフレ期待までも低迷していることに、ECBは懸念を示している。