「円高・株安」の急激な進行は杞憂、背景に円相場需給の構造変化  「1ドル90円台の円高が起こればドル買いのチャンスになる可能性が高い」と筆者は分析 Photo:REUTERS/AFLO

 米連邦準備理事会(FRB)が現在の超金融緩和政策を当面維持することを強くコミットしているため、全般的に緩やかなドル安が進行し、少なくとも年内は主要通貨に対してドル安基調が継続するという予想が支配的だ。

 円相場はどうだろうか。以前のような急激な円高局面がまた到来するのだろうか。

 筆者の予想も基本は円高・ドル安だが、今回は円高への振れは以前のような急速かつ大幅なものにはならない可能性が高い。

 年内はせいぜい1ドル90円台がおそらく円高のピークであり、その後は中期的にドル相場の堅調地合いに転換するのではないかと思う。そう考える理由は円相場をめぐる需給に構造的な変化が生じているからだ。その点をご説明しよう。

円安・株高、円高・株安パターンの消滅

 まず昨年来の円相場の最大の特徴は、2000年代中頃から続いていた円安・株高、円高・株安という円相場と株価の負の相関関係が昨年3月を境に突然消滅したことだ。これを示したのが図表1である。

 週次データでドル円相場と日経平均株価指数の前週末比(%)を計算し、相互の相関係数を計測したものだ。相関係数の計測期間は各時点の直近52週間(1年間)で、その推移をグラフにした。

 一目で分かる通り、2000年代中頃から円相場と株価の負の相関係数が続いていた(赤色破線囲いの期間)。負の相関係数の変域はゼロからマイナス1.0で、マイナス1.0になると完全な負の比例関係になる。