ゲームストップとRedditPhoto:SOPA Images/gettyimages

米国株市場で経営難にある銘柄を空売りするヘッジファンドに対抗し、SNSを使った個人投資家群「WallStreetBets(WSB)」(SNSのReddit内にある)が空売りの激しい銘柄を買い占め、ヘッジファンドに「ショートスクイーズ」(空売りした、つまり信用で売った銘柄を積極的に買い進め、価格が上昇し損失を恐れた空売り側に買い戻せざるを得ないように追い込むこと)をかけ、市場を混乱させたことは記憶に新しい。日本の株式相場の草創期における仕手戦(特定の株式を巡って買い方と売り方が争うこと)をほうふつとさせる動きだ。
空売り比率が高く、最も注目されたのは、ゲーム小売チェーンのゲームストップ、映画館チェーンのAMCエンターテインメント・ホールディングス、そして家庭用品チェーンのベッド・バス・アンド・ビヨンドの「ショートスクイーズ3銘柄」だ。ショートスクイーズで損失を被ったヘッジファンドが損失を穴埋めするために「合わせ切り」(利食いと損切りの同時執行)を行ったことで、混乱は優良銘柄にも波及し、世界株式市場の波乱要因となった。銀相場にも個人投資家が買いを入れたとの情報もあったが、Redditは否定している。
また、WSBに人気の高い米株売買アプリ、ロビンフッド(ブラッド・テネフCEO)に、ショートスクイーズに便乗しようとした個人取引が殺到し、市場混乱に拍車をかけた。WSB現象の構造と、今後の見通しについて、みずほ証券のUSマクロストラテジスト、石原哲夫氏が解説する。

「ヘッジファンドに対抗しよう」が合言葉
 個人投資家がヘッジファンドに損失負わせる

 1月下旬、米国の個人投資家が、ヘッジファンドが空売りする米株銘柄を積極的に買い占め、「ショートスクイーズ」する動きが拡大した。年初に比べて一時2400%、1日で100%以上値上がりする銘柄も見られた。

 その個人投資家群の情報交換サイト、WallStreetBetsに参加するユーザー数は1月下旬に200万人前後から数日のうちに600万人以上まで膨れ上がり、社会現象になりつつある。

 追い込まれたヘッジファンドの損失覚悟の空売りの買い戻しと損失を埋めるための優良資産の「合わせ切り」による売りが1月27日以降の米国株の不安定な動きを招く要因となった。