民主党が総選挙で300議席以上を獲得するという地滑り的大勝利を収めた。遂に民主党への「政権交代」が実現する。

 しかし、政府・与党首脳は「政権交代はトレンド」「ばくち」などと発言するなど、国民が熱病にでも取りつかれたかのような言い方をしてきた。しかし、今回の総選挙で、民主党に対する熱狂的な「風」が吹いたわけではない。むしろ、約20年前の「政治改革」以来目指されてきた、「政権交代のある民主主義」の実現という大きな潮流の中で起こったことである。そこで今回は、「政権交代」の原点である、約20年前の「政治改革」で何が目指され、何を現在実現してきたのかを考え、「政権交代」の意義を明らかにしたい。

自民党「政治改革大綱」が目指したもの

 1989年、消費税導入やリクルート事件によって自民党への批判が高まり、その対応として、自民党は政治改革推進本部を設置し「政治改革大綱」を発表した。そこでは、自民党政治の問題点を(1)政治家個々人の倫理性の欠如、(2)多額の政治資金とその不透明さ、(3)不合理な議員定数および選挙制度、(4)わかりにくく非能率的な国会審議、(5)派閥偏重など硬直した党運営、の5つにまとめ、その解決策を提示した。

 ここで重要なのは、自民党政治の問題の多くが「中選挙区制度」の弊害に起因しているとの主張であった。具体的には、中選挙区制によって、1つの選挙区に自民党が複数の候補者を擁立するため、政党本位でなく個人中心の選挙となること。それが政策よりも利益誘導を重視する政治を生み、それが高じて政治腐敗の素地を招いたと指摘したことだ。また、中選挙区制下で与野党の勢力が永年固定化し、政権交代が極めて起こりにくくなり、政治の緊張感が失われ、党内では派閥の公然化と派閥資金の肥大化、議会では政策論議の不在と運営の硬直化を招いたと、厳しく批判していた。

 そして、「政治改革大綱」は、その解決策として小選挙区制の導入を基本とした選挙制度の抜本改革を中心とした「政治改革」を断行し、国民本位、政策本位の政党政治を実現する必要があると訴えていた。

 「政治改革大綱」が目指した小選挙区制の導入による「政治改革」とは、(1)多数決原理の導入と政策本位の議会、(2)政権交代のある民主主義、(3)派閥解消、脱・族議員、(4)当選回数主義の改善と能力主義の導入、(5)候補者決定の新しいルールの導入、の5つであった。

 1994年、この内容を反映させた「政治改革関連法案」が成立して小選挙区比例代表並立制が導入された。あれから15年が経過し、政権交代が実現した今、政治にはどのような変化が起こったのだろうか。