スターバックス写真はイメージです Photo:Fred Lee/gettyimages

スターバックスやザ・ボディショップなどでCEOを務めた岩田松雄氏。岩田氏は、人と人のつながりが希薄になるコロナ禍の今、企業にますます重要視されているのが「ミッション」であると説く。多くの有名企業で実績を残してきた岩田松雄流の経営哲学を伝授する。「社員が指示されたことしかやってくれない…」と嘆く企業の経営層や幹部こそ読んでほしい。

良い会社には必ず
一本筋の通った哲学がある

「ミッション」は、 企業経営にとって極めて重要なものです。

 スターバックスを退職後、大企業やベンチャー企業などさまざまな企業の社外取締役や顧問としてお手伝いをさせていただきました。また、ドラッカーをはじめ多くの経営書を読みましたが、自分の考えが間違っていなかったという確信がさらに深まりました。

 経営がうまくいっていない会社には、「経営者が悪い」「商品が悪い」「業界が悪い」などさまざまな理由があります。しかしながら、良い会社には必ず「ミッション」や「経営理念」「社是」「フィロソフィー」などの一本筋の通った哲学があります。

「ミッション」という言葉はあまり一般的ではないかもしれません。「経営理念」と言い換えてもいいでしょう。「この企業は何のためにあるのか」、その「存在理由」が「ミッション」です。それは、たとえ明文化がされていなくても、どの企業にも必ずあるはずです。

 創業の原点に立ち返り、創業者の思いを振り返れば、「この企業は何のためにあるのか」が必ず見えてくるはずです。ミッションをしっかり確立し、社員一人ひとりに浸透させることが、経営者にとって一番大切なことです。これはスターバックスのパートナー(スターバックスでは社長~アルバイト、全員をこのように呼ぶ)もそうでしたが、ミッションを全社員と共有化することで、従業員一人ひとりのすばらしい仕事を可能にしてくれるのです。

「社員が指示されたことしかやってくれない…」という経営者の嘆きが聞こえてくることがあります。これもミッションが全社に浸透していないからです。

 小さな例として「お茶出し」について考えてみましょう。