スカイツリーと夕暮れ2月の月例経済報告の景気判断は、長くて難解な文言となった(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「霞が関文学」の悪い癖が出た
2月の月例経済報告

 2月の月例経済報告の景気判断は、「新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さがみられる。」となった。「一部に弱さがみられる」という文言が入ったので下方修正と言えるが、それにしても長くて難解な文章だ。

 判断に迷うと文章が長くなるのが、政府の景気判断の悪い癖だ。しかし今回は、判断に迷っているというよりも、踊り場入りを認めたくないという政治サイドへの配慮が働かざるを得なかったのではないか。

戦後最長の景気拡大への
こだわりが歪めた景気判断

 文章が長くなる一番の理由は、「厳しい状況にある」という景気の水準に関する文言が入っているからだ。コロナショックで景気が大変な状況になったのだから、こういう文言が入るのは当然と思えるかもしれない。確かに、「景気はどうですか」と聞かれれば、「良い」もしくは「悪い」という水準の判断で答えるのが自然だ。

 しかし、毎月の景気を水準で判断していくのは実は難しい。水準の判断は、そう頻繁に変わるものではなく、そもそもどこと比べるかによって判断が変わってきてしまう。また、一度判断を変えると、その判断がかなり長い期間続くことになる。

 景気を「良くなっている(回復、持ち直し)」もしくは「悪くなっている(後退)」と方向で捉える方が、月例経済報告にはふさわしい。実際、政府や民間エコノミストの景気判断は、方向で行うのが一般的だ。

「厳しい状況にある」という表現が入ってきたのは、新型コロナの感染が広がった2020年3月の月例経済報告からだ。ただ、景気後退を認めたくなかった政府は、景気がすでに後退していたにもかかわらず、その前月の景気判断まで「緩やかに回復している」と言い続けていた。悪化しているという表現がようやく入ってくるのは、同年4月になってからだ。

 新型コロナの感染が始まるまでは、戦後最長の景気拡大が続いていたことにしたい政府は、悪化という言葉を使うことを避けて、「厳しい状況にある」という表現を入れたようだ。

 政府は、厳しい状況になった理由として、新型コロナ感染症の影響を挙げたわけだが、いくら新型コロナ感染拡大の影響が強烈だったとはいえ、前月まで回復を続けていた景気が、1ヵ月で厳しい状況になることはない。「厳しい状況にある」という表現をねじ込むのは、かなり無理があった。