量的緩和政策が物価も景気も押し上げなかった「現実」日銀をはじめ主要中央銀行が行う大規模な超金融緩和によって、「金融相場」が起きている  Photo:PIXTA

 わが国を含む世界各国がコロナ禍に陥って早1年が過ぎた。各国は感染拡大抑制のため、自国内および国際的な行動規制を導入せざるを得ず、社会・経済活動は総じて深刻な影響を受ける状態が続いている。

 他方では絶好調のセクターもある。株式市場だ。日経平均株価は2021年2月15日、実に30年ぶりに終値ベースで3万円台を突破した。米国をはじめとする世界の他の主要株式市場も似たような状況にある。

 国内外の市場関係者からは、「これはコロナ危機下で主要中央銀行が実施している大規模な超金融緩和による“金融相場”ではないか」との声も少なくない。実体経済と株式市況の乖離が著しいのは、誰に目にも明らかな状況にあるゆえ、「現状の株価はすでに“バブル”ではないか」との見方も説得力を増してきた。

 それではコロナ禍が世界を覆う危機下で、中央銀行が現在、実施している金融政策運営とは一体、どのようなものなのだろうか。

かつて金融政策運営の中心は
金利の上げ下げだった

 かつて、中央銀行の金融政策運営といえば、景気が悪くなれば金利を下げて経済活動を刺激して、物価が上がるように促し、逆に景気が過熱してインフレが進むことになれば、金利を上げて活発過ぎる経済活動や上がり過ぎた物価を抑えにかかる、というのが普通だった。わが国でも少なくとも1990年代の初め頃までは、“金利”はときによって6%や7%、それ以上といった、結構高い水準になることもあった。

 ところが今では、金利水準はほぼゼロ%かその近辺の状態が長期化し、近年はマイナス金利まで導入されている。日銀が経済情勢をみて政策金利を上げ下げする、といった話は聞かれなくなって久しい。代わりに、日銀の近年の金融政策といえば、国債を年間何十兆円、ETF(指数連動型上場投資信託)を年間何兆円買い入れるの、入れないの、といった話ばかりになってしまっている。