カンボジア 2012年10月16日

「ポル・ポトの墓」とカジノ
国境の町に押し寄せる変化の波

ポル・ポト派史跡を観光地化

 10年ほど前、初めてこの町に行ったとき、どろどろ、でこぼこの山道を四輪駆動車で何とか登り、これらの史跡を訪ねた。アクセスが悪いだけでなく、史跡というにはあまりにも荒れ放題、木々に埋もれた建造物の残骸には何の案内板もなく、探すのに苦労したのを覚えている。

 それからしばらくして、アンロンベンの観光当局が、ポル・ポト派史跡の観光地化に取り組み始めた。史跡をリストアップし、見学コースを作る。各地点には簡単な説明を書いた案内板をたてて、入場料を取り、維持管理費に充てる。

 その話を聞いたときには、「人類史上最悪の犯罪」とまで呼ばれた悪名高きポル・ポト派とはいえ、決して風光明媚とまではいえないこの町に、荒れ果てた史跡だけを見にくる観光客がいるのだろうかーーと、思ったのだが、意外にも史跡を見にこの町を訪れる人々は後を絶たない。そして、その中心は外国人ではなく、カンボジア人だと知って、さらに驚いた。

 ポル・ポト派が1979年に崩壊して33年、内戦が1991年に終結して21年。日本の戦後と重ねれば、昭和50年代と重なる時期だ。経済成長とともに、カンボジアの人々には少しだけ、過去を振り返る余裕ができたのだろうか。私がアンロンベンで出会ったカンボジア人観光客は「ポル・ポト派に親類を殺された。いったいあの時代に何があったのかを考えたくてここへ来た」と話していた。

 負の歴史が観光資源となる例は、ドイツ・ナチス時代の強制収容所や、沖縄の沖縄戦関連の史跡など、ないわけではない。そう考えると、「ポル・ポト観光」も、現代史を知る旅を求める人々や、若い世代の学習ツアー先としての需要は高いのかもしれない。自分たちの歴史を遺す取り組みがなされるのだから、観光資源化は歓迎すべきことなのだろう。

アンロンベンの町の中心部にあるタ・モク元参謀総長の邸宅。堀が張り巡らされ、ワニが放たれ、侵入を防いでいたという【撮影/木村文】
タ・モク元参総謀長の邸宅の全景。太い丸太が柱に使用されている。この日は、プノンペンから「歴史クラブ」の高校生たちが学習ツアーに訪れていた【撮影/木村文】
タ・モク元参謀総長の邸宅の敷地に今も置かれたままの「檻」。捕らえた人をここに収容していたという【撮影/木村文】
アンロンベンにあるポル・ポト派史跡の観光案内所【撮影/木村文】

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