カンボジア 2012年10月16日

「ポル・ポトの墓」とカジノ
国境の町に押し寄せる変化の波

新たな観光資源は「カジノ」

 ところがこの町に、最近、別の開発の波が押し寄せている。

 今年1月、ポル・ポトの墓のある場所から、道路をはさんだ向かい側に、巨大なカジノ・リゾートが建設されたのだ。これまでも小さなカジノはあったようだが、この夏、久しぶりにアンロンベンを訪れてみて、その存在感にびっくりした。

 カジノはすでにオープンしており、1日500人程度の客がやってくるという。ほとんどが目の前の国境を陸路で越えてくるタイ人。現在は、カジノに加え、地上13階建て、900室を擁するホテルを建設している。

 タイとカンボジアの関係は2011年、国境にある世界遺産「プレアビヒア寺院」周辺の国境線をめぐって、双方の国軍がにらみあう事態にまで発展した。関係悪化は、国境貿易や観光にも影響したが、同年、カンボジアのフン・セン首相と親しいタクシン元首相の妹、インラック・シナワトラ首相が就任してからは改善し、国境を越えてやってくるタイ人観光客も増えているという。

 カンボジアの国境は、ベトナム側、タイ側に限らず、どこも隣接国の客を目当てとするカジノ・ビジネスのメッカとなっている。カンボジア側からアプローチすれば、車で半日以上かかる僻地であっても、道路事情のいいタイ国内やベトナム国内では、カンボジア国境に行くことはさほど苦にはならない。送迎のバスを出しているカジノもあり、「国境地帯にカジノ」はごく当たり前の風景になっている。

 ほんの10年ちょっと前まで、アンロンベンは、携帯電話の電波も届かない、陸の孤島のような町だった。住民はポル・ポト派のシンパたちで、外国人やよそ者が気軽に立ち入るのは難しい場所だった。だが、ここも、いずれ「よくあるカンボジア国境の町」になっていくのだろうか、と思った。

 カジノとポル・ポト派観光、どちらもこの町では完成形には至っていない。しかし、場違いなほど華やかにきらめくカジノに比べ、いまだに立て看板ひとつのポル・ポト派史跡の方は、どこか放ったらかしにされている印象を受けた。こうした史跡の観光資源化には、目先の経済効果だけでは計り知れない価値があることに、地元当局が気づいていることを願いたい。

タイ国境にある新しいカジノリゾート。900室のホテルを建設中だ【撮影/木村文】
新しいカジノの入り口。客のほとんどはタイ人なので、ポスターはタイ語が書かれている【撮影/木村文】

(文・撮影/木村文)

筆者紹介:木村文(きむら・あや)
1966年生まれ。国際基督教大学卒業後朝日新聞入社。山口支局、アジア総局員、マニラ支局長などを経て2009年に単身カンボジアに移住、現地発行のフリーペーパー「ニョニュム」編集長に(2012年4月に交代)。現在はフリー。

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