年金大改正#3Photo:PIXTA

年金の受給開始を70歳まで繰り下げると、受取額は42%増え、75歳まで繰り下げると84%増える。ただ、これは額面の話だ。税金や保険料などが差し引かれ、実際に使える手取り額は額面より少なくなる。手取りベースで見た、65歳から受け取った場合と比べた増加率や、65歳からの額に追い付く時期はどうなるのかは、繰り下げ受給を考える上で必須のデータだ。特集『年金大改正 損をさせない活用術』(全4回)の#3では、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏にその試算をしてもらった。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

今からの毎年100万円、5年後の同142万円
10年後の同184万円、あなたはどれを選ぶ?

 1 今から毎年100万円を受け取る。
 2 5年後から毎年142万円を受け取る。
 3 10年後から毎年184万円を受け取る。

 この三つの選択肢から好きな受け取り方を選べと言われたら、あなたはどれを選ぶだろうか。

 実はこの問い、2022年4月施行の年金法の改正による年金の繰り下げ受給開始の上限年齢引き上げを基にしている。

 改正前は、通常であれば65歳から受け取る国民年金(基礎年金)や厚生年金の受給開始を繰り下げる年齢の上限は70歳だった。改正後はこれが75歳まで引き上げられる。

 繰り下げるだけで、受け取る金額が同じなら繰り下げる人などいない。当然、繰り下げることで受取額が増加する。1カ月繰り下げるごとに受取額が0.7%増加する仕組みになっており、これは改正前も改正後も変わらない。

 受取額は5年繰り下げれば42%、10年繰り下げれば84%増加する。これで分かるように、冒頭の問いはこの増加率を適用したものだ。

 この問いを年金の話として考えたとき、どの受け取り方が有利になるか。十分に長生きできるのであれば、10年後、つまり75歳から84%増しの年金を受け取るのがいいに決まっている。

 ただ、ここで落とし穴がある。42%増える、84%増えるというのは額面上の増加額ということだ。実際に使える金額は、「額面」ではない。税金や社会保険料を支払った後の「手取り」額である。

 いつまで長生きすれば、繰り下げ受給をした方が得なのか。それは繰り下げる年齢によって変わってくるのはもちろんのことだが、年金額を手取りのベースで判断しなければ不正確だ。

 そこで、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏に、繰り下げ受給をした場合の年齢別の手取り額の増加率、元が取れる年齢のシミュレーションをしてもらった。