シドニーPhoto:Don Arnold/gettyimages

オーストラリアは新型コロナウイルスの感染抑制の優等生。ワクチン接種も進展し始めた。2020年は29年ぶりのマイナス成長となったが、足元の景気は国際商品市況の回復、財政・金融政策の総動員もありV字回復の様相を見せている。景気回復期待から長期金利は上昇し、豪ドル高が続いている。(第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)

コロナ禍でマイナス成長
世界最長の景気拡大が終焉

 昨年、中国を発端とする新型コロナウイルス(SARS-CoV-19)のパンデミック(世界的大流行)を受けた世界経済の減速、さらにそれに伴う国際金融市場の動揺により、オーストラリアの実体経済のみならず金融市場にもさまざまな経路を通じて悪影響が及んだ。

 さらに、同国においても感染が拡大したことで、当局は全土で外出禁止を実施するなど事実上の都市封鎖(ロックダウン)に追い込まれるなど、幅広い経済活動にダメージが出る事態に発展した。

 同国では一昨年末以降、史上最悪の被害をもたらした森林火災が発生していたことも重なり、昨年前半のオーストラリア経済は2四半期連続のマイナス成長となる景気後退局面(リセッション)に陥った。こうして1991年半ば以降「世界最長記録」を更新してきた景気拡大局面は幕を下ろした。

 しかし、当局による強力な感染対策が奏功する形で新規感染者数がいったん大きく鈍化したことを受けて、その後は行動制限を段階的に緩和することで経済活動の正常化に向けた取り組みが進められた。