私はこうして受付からCEOになった
カーリー・フィオリーナ 著/村井章子 訳 1600円 (税別)

 哲学・歴史専攻、ロースクール中退。『私はこうして受付からCEOになった』は、この芳しくない学歴を引っ提げて不動産会社の受付からキャリアをスタートさせ、ヒューレット・パッカード(HP)の最高経営責任者(CEO)まで上り詰めた女性、カーリー・フィオリーナの楽しく胸を打つエピソード満載の自伝である。

HPという会社

 いまこの原稿を書いている2007年末時点で最新のフォーチュン500によると、ヒューレット・パッカードは売上高916億ドルでアメリカ企業中14位である。コンピュータ・OA機器部門ではIBMを抜いて堂々の1位だ。そしてグローバル500では、41位にランクされている。41位がどのくらいのレベルかをイメージしていただくために近いランクの日本企業を挙げると、37位にホンダ、40位にNTT、45位に日産、48位に日立が顔をそろえている(日本企業トップはトヨタで6位)。つまりカーリーは、NTTの経営者になったようなものだと言える。

 イギリスのサッチャー首相にドイツのメルケル首相。アメリカでは初の女性大統領が誕生するかもしれないという現代にあって、女性経営者ぐらいで騒ぐこともないだろうと思われるかもしれない。だが、意外やカーリーがHPのCEOに就任した1999年の時点では、フォーチュン1000社で初の女性CEOだった。しかも若くて美貌となれば、話題にならないほうがふしぎかもしれない。

階段を三段飛ばしで

 この自伝には、多感な少女時代から、最初の結婚、離婚のことまでが包み隠さず書かれている。階段を三段飛ばしで駆け上がるようなAT&T、ルーセント・テクノロジーズ時代のことはもちろん、HPのCEOに就任して味わった思わぬ挫折のことについても、いたって率直だ。