1億総リストラ#3Photo:Bloomberg/gettyimages

東芝のグループ傘下企業では、いわゆる「追い出し部屋」裁判が継続中。会社側は退職を促す目的の配置転換や出向ではないと全面否定して争っている。特集『1億総リストラ』(全14回)の#3は、社内失業者の今を追うとともに、ひとごとではない「黒字リストラ」を実施する36社を明らかにした。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

面談で繰り返し早期退職を拒否
「追い出し部屋」に送り込まれた

 東芝エネルギーシステムズ(ESS)でIT業務に携わってきた男性社員のAさん(52歳)にとって、2018年11月8日は運命の歯車が狂いだした日だ。

 ESSは東芝の主要子会社の一つである。この日、東芝の車谷暢昭会長兼CEO(最高経営責任者、当時)は中期経営計画「東芝Nextプラン」を発表した。東芝グループ内での人員適正化の方針が盛り込まれたもので、ESSは45歳以上の社員に対し早期退職者を募ることになった。目標数は約800人だ。

 ESSでは条件に合う対象者全員に面談が組まれた。「今となってはお気楽としか言いようがない」とAさん自身が振り返るように、面談が始まる前までは早期退職者募集の動きをどこかひとごとのように感じていた。

 1回目の面談は19年1月17日。約30分間の面談中、上司は「東芝を取り巻く情勢は厳しい」などと説明した。

 2回目の面談は2月5日に約50分間。上司は「意に沿うような仕事の提供が厳しい」などと話した。

 3回目の面談は3月7日。上司に加えて、人事系の幹部も同席。募集に応じなければ賃金が下がる可能性があり、グループ外の会社に出向になることを告げられた。

 どの面談においても、Aさんは会社に残るという意思を告げた。そして4月になって、「追い出し部屋」に送り込まれる悪夢の日々が始まった。