婚姻届「従来の家族制度を脅かす」という否定派も多い夫婦別姓だが、本来の意義は違う?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

丸川大臣に批判も
選択的夫婦別姓の難しい現状

 丸川珠代・男女共同参画担当相が、選択的夫婦別姓の実現を求める意見書採択を阻止するよう文書で地方議員に呼びかけたことが、「本来のジェンダー平等という職務に反する」という反発を招いている。

 民法では、結婚した男女の姓は夫か妻のいずれかに統一しなければならない。これは形式的には男女平等の仕組みとなっているが、現実には9割以上の家族が夫の姓を選んでおり、姓の変更の負担が一方的に女性に課せられる「間接差別」といえる。

 結婚すると姓を変えなければならないという規制によって、未婚時に旧姓で築いてきたキャリアを継承することが困難になる。このため職場などでは、通称として旧姓を用いる場合も多いが、同一人が身分証明の手段としての戸籍名とは別の姓を併用することで、社会的に混乱をもたらす場合も多い。このため、結婚後も旧姓を維持できる夫婦別姓選択の実現が、男女共同参画会議の大きな柱の1つとなってきた。

 第一に、「夫婦は婚姻の際に夫または妻の氏を称する」と定めた民法750条の規定は、「家族を単位」とする社会制度に基づくものとされる。これは、過去の自営業や専業主婦世帯のように、家族を単位とした働き方が主流であった時代には合理的なものであった。

 しかし、就業者に占める被用者比率が9割を占め、かつ共働き世帯が1240万と、専業主婦世帯の571万と比べて2倍以上になっている現状(総務省『労働力調査』2020年)では、むしろ逆となっている。その意味で夫婦別姓選択は、所得税の配偶者控除や社会保険の被扶養者制度といった、公平性を欠き女性の就業拡大を抑制している仕組みを見直し、「個人単位」へと社会制度を見直す改革と共通したものといえる。

 第二に、夫婦別姓選択については、国民の間にコンセンサスが形成されるまで待つべきとの意見もある。しかし、夫婦が同性か別姓のいずれがよいかについて、国民の合意は必要ない。それは個々の家族の判断に委ねればよいことであり、無理に政府が統一しなければならない必然性はない。