岡田正志社長

不動産大手5社である三菱地所、三井不動産、住友不動産、東急不動産ホールディングス(HD)、野村不動産HDの2021年3月期決算予想は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で売上高も利益も軒並み前期比マイナスだ。中でも東急不動産HDは、売上高8950億円に対し純利益170億円で利益率が1.9%。5社の中で最も利益率が低いのはなぜか。どう立て直すのか。グループの中核会社である東急不動産の岡田正志社長が経営の「反省」を語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 大根田康介)

ホテルの土地・建物は借りているので
どんなに売り上げが下がっても賃料を払う

――2021年3月期中間決算を発表した際、コロナ禍の影響でホテル事業(特に東急ステイ)が予想以上に落ち込み、訪日外国人観光客(インバウンド)回復の見通しが立たないことが厳しい通期予想の背景にあるとしていました。

 ホテル業界全般が落ち込み、当社だけが特別悪いわけではありませんが、非常に厳しいのは確かです。

――アパホテルは20年11月期通期決算で黒字を何とか確保し、東横インは21月3月期中間決算で大幅赤字に転落しました。アパホテルはホテルを自己保有し、東横インは地元の不動産オーナーから土地と建物を長期で借り上げて賃料を払う。賃料は売上原価に含まれるため、売り上げが利益に直結する。この出店戦略の違いが両社の明暗を分けたのだと思います。東急不動産の戦略は?

 自己保有は一部ありますが、基本的には土地や建物を不動産オーナーから借りて運営しているところが多い。そのため売り上げの落ち込み、稼働率の低下がストレートに利益に直結しやすい。どんなに売り上げが下がっても、オーナーに賃料を支払いますから。

 自己保有は賃料がない分、損益分岐点が低くなる。代わりに先行投資が必要ですし、長期に収益が落ちたままであれば資産価値が下がり、減損処理する可能性があります。

 そのため、自己所有と賃借のどちらが正解かということは一概にいえません。

――短期的に影響が出るか、長期的に影響が出るかの差ということ?

 そう。先行投資はホテル事業ではなく、物流事業、再生可能エネルギー事業、再開発事業など別のプロジェクトで行っています。ホテル事業はできるだけ少ない投資で拡大しようという戦略です。それでコロナ禍で売り上げ自体がどんと落ち、どうしても赤字が大きくなり苦戦することになりました。

――損益計算書(PL)上は厳しいけれど、貸借対照表(BS)上は大丈夫ということになりますか。

 そうですね。PL上は確かに厳しいですが、ホテル資産をあまり持っていないのでBS上の資産を傷めているわけではありません。

 今回のことはコロナ禍が原因ですが、インバウンドがずっと戻ってこないのかといえば、そう考えている人は少ないと思います。戻るのが2年後か、それとも4年後かという差はあるかもしれませんが、インバウンドが回復すれば以前の状況に戻ります。なのでこの1年、2年の状況を見てホテル事業をどうこうするという判断はしないでおこうと考えています。

 ワクチンが普及してくれば、国内の動きも全く変わると思います。Go Toトラベルキャンペーンがあった昨年10月、11月は、2カ月程度ですが相当回復しましたので、動きさえ出てくれば期待できます。