前首相の突然の辞任によって、事実上ストップしていた国会が再始動した。新首相の所信表明に続いて、与野党幹部による代表質問、そして今週からは、参議院予算委員会の論戦が始まっている。

 参議院では過半数を制した野党が勢いを増す中、飄々とかわす福田康夫首相の姿が、ある意味で新鮮に映る。「小泉=安倍」時代の徹底抗戦の与野党論戦に慣れた7年間からすれば、それも当然かもしれない。そうした意味で国会は正常化したともいえる。

 だが、衆参の予算委員会で激論を交わすこの国の政治家たちの姿を見ていて、筆者は言いようのない不安に捉われた。すっかり存在感の失せた前任者、安倍晋三前首相が最後に投げかけた国家上の危機管理というテーマのことである。

 先週の衆院予算委員会、〈安倍康夫内閣〉と漫談師さながらの言葉遣いで、自民党政権への質問攻撃を繰り出した田中真紀子元外相だが、その彼女ですら、その重要なテーマに触れることはなかった。この原稿を書いている現時点で(10月16日14:00)、参院予算委員会では、石井一元自治相が公明党の「政治とカネ」の問題を厳しく追及している。だがこれまでどの議員もそのテーマに触れていない。

 期せずして、前首相が投げかけた国家の危機管理上のテーマとは、「首相臨時代理」の問題である。

 先月12日、突然に首相の座を辞した安倍前首相だが、その後入院、新しい首相の決まるまでの12日間、一時も臨時代理を置くことはなかった。

 「これは異常な事態です」