日本銀行従来の政策の枠組みが妥当であることを強くアピールした日銀だが、政策点検の本当の狙いは別にありそうだPhoto:PIXTA

金融緩和の点検」の
真の狙いは副作用対策

 金融市場が非常に注目してきた「金融緩和の点検」、及びそれを踏まえた政策措置の修正が、3月19日の金融政策決定会合で発表された。

 政策措置の修正の真の狙いは、長期化している異例の金融緩和の副作用軽減、つまり副作用対策である。日本銀行は今回改めて2%の物価目標の達成が可能であることを強調したが、本音のところでは、すでに2%の物価目標の達成を諦めているだろう。

 しかし、2%の物価目標を明示的に修正すれば、金融政策が正常化に向かうとの観測から、急速な円高、株安など、金融市場の悪い反応を招く可能性がある。また、政府から批判を受ける可能性もある。

 そうした点に配慮して、日本銀行は2%の物価目標の達成を目指す現在の金融政策の枠組みを、当面の間は継続せざるを得ない。そこで、金融緩和策が継続する中でも、累積した副作用が大きな混乱を生じさせることを防ぐために、副作用軽減策が講じられているのだ。2016年のイールドカーブ・コントロール導入以降の日本銀行の政策の本質は、こうした副作用軽減策と考えられる。

 副作用対策の中でも、今回の「金融緩和の点検」で特に際立ったのは、金融機関の収益悪化への対応だ。それは、貸出促進付利制度に最も強く表れている。

「2つの使命」(マンデート)の
バランスを取り戻す大きな変更

 今回の「金融緩和の点検」で必ずしも注目を集めていないが、実は見逃せない重要な制度変更がある。それは、年8回の日本銀行の金融政策決定会合のうち4回で、金融システムの動向について、プルーデンス(金融機関の健全性)政策を担う金融機構局から報告を受けることを決めた、ということだ。これは、歴史的な変更と言ってもよいのではないか。