最強の中高一貫校&小学校・幼児教育#16(c)高瀬志帆/小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』連載中

「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中の「二月の勝者」という漫画をご存じだろうか。受験テクニックや合格のノウハウはほとんど出てこない一方で、中学受験の本質を鋭く描いている。特集『最強の中高一貫校&小学校・幼児教育』(全18回)の#16では、漫画と筆者がコラボし、中学受験生を持つ親に届けたい言葉を漫画のこまと共に掲載する。(教育ジャーナリスト おおたとしまさ)

中学受験は壮絶な
親子の人間成長ドラマ

「二月の勝者」が面白い、と教育関連企業の人から聞いたとき、きっとデフォルメされた中学受験を描いたものか、あるいは極端な中学受験のノウハウを漫画化したものなのだろうと勝手に想像していた。

 ところが、実際に読んでみればさにあらず。「中学受験のすごく本質的なことが描かれている!」と驚かされた。これまでの取材経験を基に言わせてもらえば、中学受験をする親子には、例外なく涙なしでは語れない壮絶な人間成長ドラマがそれぞれにある。子どもだけではなく親も含めての成長ドラマだ。

「二月の勝者」は、「桜花ゼミナール」という架空の中学受験塾を舞台に、中学受験という選択をした親子たちの苦悩と成長、それに関わる主人公の新米塾講師、佐倉麻衣や、もう一人の主人公でカリスマ塾講師の黒木蔵人たちの葛藤がリアルに繰り広げられる。

『二月の勝者』のコマ(第1集の第1講)(c)高瀬志帆/小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』連載中

 冷徹な合格請負人として登場する黒木は、子どもたちを前に「君たちが合格できたのは、父親の『経済力』そして、母親の『狂気』」(第1集 第1講「二月の挑戦」より)などと、にべもないせりふを連発するが、彼が子どもに向けるまなざしの奥底には何らかの「願い」が秘められている。

 黒木の「願い」とは何か。漫画を読み進めるうちにそれが分かるようになり、そして共感した。彼が内に秘める願いを共にかなえるために、“親”ができることは何なのか。昨年、それを「二月の勝者」とコラボして100の言葉にし、一冊の本にまとめた。

 ここでは、その中から10の言葉をさらに選び、それぞれ漫画のこまを対応させて掲載している。そのものずばりのシーンである場合も、「なぜこのシーン?」と思うところもあるだろう。不思議に思う場合には、ぜひ該当シーンの前後を実際の漫画で読み返してほしい。

おおたとしまさ氏おおたとしまさ/1973年生まれ。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学中退。上智大学卒業。リクルートを脱サラ独立後、育児・教育をテーマに取材・執筆・講演・メディア出演などを行う。漫画「二月の勝者」とコラボした『中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉』(小学館)など著書60冊以上。

 もう一つお願いを言えば、記事の内容をうのみにせず、必ず「自分ならどう伝えるか」を考えながら読んでほしい。まったく同じ趣旨のお願いが漫画の中にも出てくるので引用したい。授業見学を申し出た佐倉への黒木のせりふだ。

「あくまで『見たものをどう活用するか』の判断は、『自分で考える』これが見学の条件です」(第6集 第51講「九月の発心」より)

 ましてや、子どもにそのまま見せるようなことは避けてほしい。わが子への「願い」や「思い」は、自分の言葉で伝えるべきだから。

 では、まずは「第3集 第24講『五月の回答』」でも提示された中学受験をする大きな意味から考えてみたい。