忍び寄るコスト増と金利上昇が、日本景気の重石になるタイミング景況感は大幅に改善しているものの、日本経済には新たなリスクも忍び寄る(写真はイメージです) Photo:PIXTA

景気回復が確認された
3月調査の日銀短観

 再発令された政府の緊急事態宣言が徐々に解除される中、実施された3月調査の日銀短観では、製造業の景況感の大幅な改善が示された。一方非製造業は、製造業に比べ弱めの動きとなったものの、景況感の改善が確認され、大方の予想よりも底堅い推移が示された。

 製造業では、大企業・業況判断DIが、前回調査(20年12月)に比べて15ポイント改善のプラス5となり、19年12月以来、1年3カ月ぶりにマイナスを脱している(図1参照)。業況判断DIは、景気が「よい」とする企業の比率から「悪い」とする企業の比率を差し引いたもの。同DIがプラスということは、景気が「よい」とする企業が相対的に多くなったことを示している。

 製造業の大企業・業況判断DIは、昨年4月の緊急事態宣言発動などを受け大幅に落ち込んだ20年6月に比べて39ポイント上昇し、コロナ禍前の19年12月の水準を5ポイント上回っている。

 大企業・製造業における景況感の大幅改善は事前予想通りだったが、中堅、中小の製造業においても、業況判断DIはそれぞれ15ポイント、14ポイントの上昇となり、事前予想に比べ大幅な改善をみせた。世界的な半導体関連需要の拡大や世界経済の回復などから、電気機械、はん用機械、業務用機械、生産機械、非鉄金属、金属製品、自動車など、多くの業種で景況感の大幅な改善がみられている。

 一方非製造業では、業況判断DIの上昇(景況感の改善)幅が、大企業で4ポイント、中堅企業で3ポイント、中小企業では1ポイントと、製造業に比べ小幅にとどまっている。

 非製造業を業種別にみると、リモートワークの拡大などから、通信、情報サービスの業況判断DIは大幅に上昇した一方、緊急事態宣言の再発令で、宿泊・飲食サービスの同DIが大幅に低下している。ただ、悪化の見方もあった中小企業・非製造業全体の景況感が小幅ながら改善となっており、全規模・全産業でみても業況判断DIは上昇が続いた(図1参照)。