日中関係を脅かす政治的激震が続くなか、多くの交流イベントや活動が中止となった。茫然自失に陥った両国関係者も多い。私のところに毎日のように、知り合いから面識のない方々までの連絡が届いている。「こういうたいへん厳しい状態のもとで、どうすれば日中両国の関係改善に寄与できるのか」、「どんな行動を起こしたらいいのか」といった趣旨のものがほとんどだ。

ある種の喪失感に
襲われている人も

 たとえば、名古屋の大手旅行社で営業をやっている日本人女性からは、11月に予定されていた中国の地方政府との大型記念イベントがキャンセルされた、との知らせが送られてきた。連絡文書の文面からは、これまで寝る時間も惜しむほどたいへん忙しかった仕事には大きな空きができ、勤務時間をどう過ごせばいいのかわからなくなり、ある種の喪失感に襲われている、といった心境が読める。

 彼女をどう慰めればいいのか、私にもわからない。心に痛みを覚えた。

 ある在日中国人女性から次のような悩みを訴えるメールが送られてきた。

「今、中国向けのビジネスを始めたばかりで、正直いうと、今度の事件はショックでした。日本製の商品は買わないと言われているが、それを欲しがっている人も沢山いる。長白山に近い自分の故郷にある有名な観光地も日本に紹介し、大勢の日本人にそこに行っていただきたいとも思っている。でも、日中関係が悪いこの時期に、このような夢は果たして実現できるのだろうか」

 関西のとある大手旅行社に勤める中国人社員からのメールは、次のように述べている。

「日中関係が厳しくなった関係で、わが社の中国人観光ツアーがすべてキャンセルとなってしまい、会社の経営にとってはたいへんな損失となった。現在は中国の専門学校などにあたっている。優秀な人材を日本研修に派遣できるようなプロジェクトを模索している」