日本ではプラスチック製のドームの中でベイブレードを戦わせるのが一般的だったが、イスラエルでは値段が高く、親にも買ってもらえなかったという。そこで、公園の水飲み場の台で同級生と遊んだのを懐かしそうに思い出していた。

 ベーゴマという日本の古いおもちゃが、遠く離れたイスラエルでベイブレードに進化して子どもたちを魅了する。しかし、ベイブレードの流行よりも昔、なんと日本人がコマの存在を知る数百年以上前にユダヤ人は既にコマを使っていたのをご存じだったろうか?

コマとユダヤ人
つながりはなんと紀元前165年

イスラエルの伝統的なコマイスラエルの伝統的なコマ

 コマとユダヤ人のつながりはなんと紀元前165年、今から2100年以上前にさかのぼる。当時、セレウコス朝(ギリシャ)に征服されたユダヤ人たちは聖書の勉強を一切禁じられてしまう。しかし、信仰心を捨てられなかった人たちは洞窟の中で隠れて聖書を勉強していた。そこにギリシャ兵が通りがかったが、機転を利かせたユダヤ人たちは、聖書を岩の下に隠してあらかじめ用意していたコマを取り出して遊び、難を逃れたという。

 その後、ヨーロッパに渡ったユダヤ人たちが4面のコマをサイコロの代用として使い始める。コマのそれぞれの面には「Nun, Gimel, Hei, Shin」の4つの文字が描かれている。

 それぞれの文字は、ネス・ガドール・ハヤ・シャム(「そこで偉大な奇跡が起こった」)頭文字を取る(※筆者注:ヘブライ語は右から読む)。コマを回して出た文字ごとに割り当てられた数のコインチョコレートを受け取ることができるというのがルールだ。

 ギリシャからの解放を祝うユダヤ教の冬のお祭りであるハヌカでは、ユダヤ人たちはコマを回して遊ぶ。まさに、ユダヤ教の信仰を守るシンボルになったのだ。

 既にコマの文化がユダヤ人に定着していた事実は、冒頭紹介したベイブレードの流行にも影響を及ぼした。

 イスラエルでベイブレードのアニメが放送された際には、宣伝CMにハヌカの祭りで歌うコマの歌がバックで流れたという。その年の放送がちょうどハヌカの祭りの季節に重なったこともあり、子どもたちのプレゼント用にベイブレードを買おうとおもちゃ屋の列に並ぶ親たちが絶えなかったという。