邱永漢氏に師事し、2005年より、チャイニーズドリームを夢見て北京で製パン業を営む荒木尊史さん。今年3月に日本に一時帰国した際の空港の様子、日本と中国とのコロナへの取組や対応の違いなど、再入国した中国・深圳のホテルでの隔離生活のなか、レポートしてくれました。
私は今、中国の深圳市にある隔離ホテルでこのレポートを書いています。
というのは3月下旬に約1年ぶりに日本へ一時帰国し、20日間ほど滞在した後、仕事の拠点である北京に戻る途中にレポート執筆の依頼が来たためです。中国の隔離政策は徹底しており、隔離ホテルの部屋からは一歩も外へ出ることはできません。窓にはご丁寧にワイヤーで格子まで付けられており、万が一、火事になったら脱出できないなぁ、と不安をおぼえながらも、少しでも有意義な隔離生活が送れるよう孤軍奮闘しているところです。
さて、約ひと月の間に「中国から日本への入国」と「日本から中国への入国」を体験したわけですが、良くも悪くもそれぞれのお国柄が出ていて、その違いをあらためて目にすることになりました。
性善説の日本と性悪説の中国
私が日本へ一時帰国する直前の3月19日に厚生労働省による「水際対策の強化」がスタートしました。基本的には外国籍の人々のビジネス往来はできなくなり、日本国籍か「特段の事情がある在留許可をもった人」しか入国が認められなくなりました。
ちょうど4月から日本の学校が始まるタイミングだったためなのか、私の搭乗した飛行機には多くの中国人の若者が乗っており、日本人は2割にも満たないように見受けられました。席はガラガラかと想像していましたが8割ほど埋まっており、思いのほか日本へ向かう人が多いことに驚きました。

水際対策の強化により、日本入国の72時間以内のPCR検査陰性証明書、厚生労働省のホームページから健康QRコードの取得、自主隔離の誓約書、位置情報確認のための3つのアプリのインストールなど多くの事前準備が必要となりました。
成田空港に到着後、これらの書類やアプリのインストールおよび動作チェックを行なうのですが、これが気の遠くなるような作業で、日本人旅客ならまだしも、日本語がしゃべれない外国の方たちにはかなりハードルの高い作業となります。実際、6時間以上かかった方もいたそうです。
6つほどのチェック項目ごとにブースが分かれており、それぞれのブースを通過するごとに関連資料に“判子”を押してもらえます。すべての“判子”を揃えて、なおかつ簡易PCR検査で陰性証明を取得すると、ようやく入国スタンプを押してもらい預けた荷物が受け取れます。
まるでスタンプラリーのようですが、日本も入国のハードルを上げ、なんとかして入国者数を絞り込みたい、コロナ陽性者の国内流入を阻止したいという努力と強い意志は大いに感じられました。
しかし、日本とお隣の中国との最大の違いは『自主隔離か強制隔離か』というところです。可能な限りトレースする仕組みをつくったとしても、最終的には個々人の良心に頼らざるを得ない自主隔離と、有無を言わせず強制的に空港から隔離ホテルへ直行させられる強制隔離の中国とでは根本的にやり方が違います。
コロナを封じ込めるという意味では中国のほうが効果的なのでしょうが、隔離ホテルの確保をはじめ、なかなかハードルの高いやり方です。日本では大人数での飲み会が社会問題になっているようですが、引き続き個々人の良心と良識に頼らざるを得ないのが実情なのでしょう。
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