アラブ 2021年4月30日

【緊急レポート2021】
ワクチン接種で成功したイスラエルやUAE、
新規感染者数が日々最高値を更新中のトルコやイラン。
コロナで格差がますます広がる中東の今は?

中東のコロナ対策のハブを目指すUAE

 UAEでは昨年12月よりファイザー社製とシノファーム社製のワクチンの接種が開始されました。現在では、UAEの人口の約35%がワクチン接種を終了しているといわれています。ドバイ首長国には中東のハブ空港があるため、UAEでは医療従事者だけではなくエミレーツ航空関係者と空港での従業員に対しても優先的にワクチンの接種が進められたようです。
 
 UAEで接種された大半のワクチンはシノファーム社製のものであろうと予測されています。UAEでは3月下旬にシノファーム社との連携が発表され、UAE国内で年内にはワクチンが生産できるよう準備されています。
 
 また、UAEではワクチン1瓶で6回接種できる特殊な注射器も生産しており、徳島県がUAE企業からの購入を決めたと報じられています。このように、世界中で繰り広げられているワクチン獲得競争を見据えて、UAE は中東におけるコロナ感染対策のハブとなることを目指しているようです。
 
 さらに、ドバイ首長国では10月から国際博覧会(万博)が開催される予定となっています(2021年10月1日~2022年3月31日開催予定)。この万博も日本のオリンピックと同様に、本来なら昨年開催される予定でしたが、延期となっているのです。
 4月7日に、ドバイ首長国のハムダン皇太子は、参加する各国代表に対してワクチン接種の機会を提供すると強気の発表をしています。

「ワクチン外交」から取り残された弱者たち

 このように世界中で「マスク外交」の次は「ワクチン外交」が、し烈に繰り広げられています。弱い国もしくは弱者(貧者?)には、なかなかワクチンの順番が回ってこないという厳しい現実があります。
 そのあおりを受けて、弱い国の中の弱者がさらなる被害をこうむりつつあるのが、トルコに逃れたウイグル人だといわれています。トルコは「マスク外交」の際にはマスクや医療機器を提供する「強者」でしたが、ワクチンに関しては供給してもらう側の「弱者」に転じています。
 
 以前より国外に逃れたウイグル人を最も多数受け入れていたのは、民族的にも近いトルコでした。ところが、トルコからトルクメニスタンなどの第三国を通じて、強制送還されるウイグル人が増加傾向にあるのだそうです。
 中国からトルコへのワクチン提供が、「異例」といわれるほど遅れていたために、ワクチンの提供と引き換えに中国がウイグル人の強制送還をトルコに迫っているのではないかといわれているのです。当然、トルコと中国の両政府はこのうわさを否定していますが、状況的には疑惑を払しょくするのは難しそうです。

コロナ禍で変わった聖地メッカの巡礼規定

 今年は4月13日からラマダン(断食月)が始まりました。昨年はコロナ禍での初めてのラマダンということで混乱もありましたが、今年は2回目ということもあり、大きな混乱はなさそうです。
 ただし、コロナの感染状況が国ごとに異なっているため、状況は一様ではありません。ラマダン中の感染拡大を懸念して夜間の外出禁止時間を増やしたり、モスクでの礼拝を認めていない国もあれば、規制を一部緩和させた国もあります。モスクでの礼拝が認められたところでは、きちんとソーシャル・ディスタンスが取られているようです。
 
 このラマダンからサウジアラビアの聖地メッカにあるグランドモスクとカーバ神殿では、検温、マスク着用、ソーシャル・ディスタンスを取ること以上のことが入場者に求められるようになりました。それは、両施設への入場者そのものがコロナウイルスの免疫を持っていると思われる人だけに制限されるようになったのです。
 
 巡礼省によれば、「免疫保有者」として想定されているのは、新型コロナウイルスワクチンの接種を2回受けた人、14日以上前に1回の接種を受けた人、新型コロナウイルスに感染し回復した人のいずれかの該当者ということでした。
 このような制限はこれまでにはみられない新しいものです。今回のサウジ巡礼省の規定が、今後、様々な場面での入場資格の基準となっていくのかもしれません。

  (文:岩永尚子)

著者紹介:岩永尚子(いわなが・なおこ)
日本では珍しい女性中東研究家。津田塾大学博士課程 単位取得退学。在学中に在ヨルダン日本大使館にて勤務。その後も専門のヨルダン教育現場のフィールドワークのために、スーツケースを抱えて現地を駆け回る。2012年まで母校にて非常勤講師として「中東の政治と経済」を担当。現在、本レポートをまとめた電子書籍『教えて! 尚子先生 中東・イスラムってなんですか?』(オルタブックス)が発売中。ほかに、『世の中への扉 イスラムの世界 やさしいQ&A』(講談社)など。「海外投資を楽しむ会」最初期からのメンバーでもある。

 


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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