だから基本は尖閣諸島にしても、日本は安保条約には頼れない。自分で守る準備、体制を整えておく必要がある。

 もっとも米国が尖閣を安保条約第5条に基づくコミットメントを何度も確認していることは抑止という効果があり、それは重要だ。

 今回の日米共同声明も、その点では明確なメッセージだ。

森本元防衛相Photo by T.U.

 自衛隊は沖縄本島だけでなく奄美大島、与那国島、石垣島、宮古島などの南西諸島方面に陸海空でざっと1万人ぐらいの防衛力を展開しつつある。

 日米間でもいざという事態に備えて、陸上自衛隊と米国の第3海兵師団、航空自衛隊と米空軍、海上自衛隊と第7艦隊の間で、例えば尖閣諸島を想定して離島を使って上陸訓練や統合訓練を行いつつ、ただちに日米対応ができる態勢をとっている。

 また東シナ海中心に周辺海域・空域は常時、警戒監視体制があり、海保と自衛隊の連携、日米の連携も整っている。

 重要なのは、こうした取り組みが抑止力になって中国に違法な行動を自制させることになるということだ。

欧州諸国の艦艇派遣や連携強化
日本の安全保障の重要なインフラ

――英国やドイツも艦船をインド・太平洋に出してきています。19日にはEUが、中国の海洋進出を念頭に「志を同じくするパートナー」との連携を強化するなどの「インド太平洋戦略」を発表しました。

 世界のなかでインド・太平洋地域が今後、大国が衝突する蓋然性が高いと思っているからだろう。突き詰めて考えると、この地域の海洋で次の時代の紛争が起こると考えているのではないか。

 もちろん欧州の国も、現実的な個別利害はある。フランスはインド太平洋に領土を持っているし、英国はEUから独立して「グローバルブリテン」というかつての大英帝国としての復活をビジョンとして持っている。この地域での存在感を高めて、貿易や資源確保を図るという思惑はある。

 だがそれだけではなく、仏英独は世界の安定に責任を持つという意識があるわけだ。インド太平洋地域は、これからの世界でいろいろな意味で重要な地域だ。その地域に関心をもって関与していることを見せておく必要があり、それが主要国の役割だと思っている。その地域にプレゼンスし、影響力を持つということはその国の世界での存在感を示すステイタスにもなるからだ。

 日本にとっても、欧州の国々やG7のメンバーがこの地域の安定に大きな関心を持つことは非常に意味のあることだ。これらの国とは2プラス2(外務・防衛)の枠組みを持っているし、防衛装備協力の協定もあっていろんな連携の枠組みが進むことが期待される。

 結局、こうした連携の枠組みが中国に無謀な行動を自粛させることになり、日本の安全保障を確保するうえでも重要なインフラが広がっていくことになる。