フェルミ推定」は、調べても正確な答えがわからないような一見難解な問題だ。
でも、地頭のいい人はわずかな手がかりだけでパッと概算することができる!
本連載では、ビジネスでも日常のひとコマでも使える超・高速計算テクニックと、どんな難問でも自分なりの答えを導くコツを紹介したイギリスで話題の1冊『世界の猫はざっくり何匹? 頭のいい計算力が身につく「フェルミ推定」超入門』より一部を特別に公開する。

あなたの生産性を奪う「待ち時間」、ざっくり計算するコツとは?Photo: Adobe Stock

「待ち時間」をざっくり計算する方法

 10月の短い休み、僕はテーマパークのレゴランドにいる。何度目だろうか。子どもたちがどうしてもパイレート・フォールズに乗りたいとせがんでくる。「1時間待ち」という看板を見て気がめいる。1時間かけて列をゆっくりと進んでから、たった5分間ボートに乗って、最後にはずぶ濡れになるのだ。

 幸いにもボートに乗り込む人の様子がよく見えるので、1時間待ちというレゴランドの予測が正しいかどうか確かめられる。本当にそんなにかかるのなら、列を外れて別のアトラクションに乗ろう。

 そこで、サンプル調査をすることにした。出発するボートを観察して、5分間で何人が乗っていくかを数えるのだ。中には4人乗っているボートもある(いってらっしゃい! 列がぐっと短くなるぞ)。誰も乗っていないボートも2艘ある(おいおい! もったいないだろう)。

 5分間で36人になったので、平均処理人数は1分あたり約7人。列の長さを見積もると、約150人だ。

 1分あたり7人で150人。150÷7、約20分だ。1時間待ちというレゴランドの予測は、明らかに大きく間違っている。きっと20分としたほうが合っているだろう。俄然元気が出てきたが、1つ考えに入れていない要素があった。

 プレミアムチケットを持っている客は、別の入口から入ってそのまま列の先頭に並ぶことができる。Qボットというシステムだ。このせいで列の進み方が約25%遅くなることが分かったので、待ち時間は25分に近くなる。

 それでも、待ち時間の看板を信用する人よりも多くの情報が得られたし、何分間か暇つぶしにもなった。満足した。

 でも、それもライドが終わるまでのことだった。結局、濡れネズミのような格好でボートから降りる羽目になったのだから。

(本原稿は『世界の猫はざっくり何匹? 頭のいい計算力が身につく「フェルミ推定」超入門』ロブ・イースタウェイ著、水谷淳訳の抜粋です)