「やるべきこと(ミッション)」と「報酬(お金)」の関係を明確にする

 ヘッドコーチに提示されるミッションは、チームの状況によって異なると思いますが、さいたまブロンコスの場合は、「“現有戦力で”シーズンを通して最大限のパフォーマンスを発揮し続け、シーズンを通した結果を出すこと」です。優勝できる戦力があるなら、「優勝すること」がミッションになりますが、現在のブロンコスにまだそれだけの力はありません。

 例えば、ブロンコスに「B3で最高で5位、順当なら6位から10位になれる戦力」があるとします。その場合、チームを5位以上にするのがヘッドコーチの仕事です。そのためにシーズンが始まる前から選手個々を掌握し、戦術を考え、それをチームに浸透させます。試合で勝つためのあらゆる「準備」を積み上げていくわけです。シーズンに入れば、選手の起用法を考え、選手の戦術の遂行能力やモチベーションを高め続けなければなりません。そうしたチーム全体のマネジメントによって、試合で最大限のパフォーマンスを発揮させ、シーズンを通した結果をたたき出すのがヘッドコーチの役目です。その仕事に対して支払われるのが年俸なので、「やるべきこと」と「お金」の関係が明確になっているわけです。その結果、チームが4位以上になったとしたら、「やるべきこと(ミッション)」が「報酬(お金)」を上回ったということなので、当然ボーナスが支払われることになります。

 チームは、最初の契約の時点でヘッドコーチとその認識を明確に共有しておく必要があります。その作業を怠ると、のちのちヘッドコーチが「戦力が足りなかった」とフロントを批判するといった事態が生じます。まったく不健全な批判であり、責任転嫁に他なりません。「現有の戦力で最大限の結果を出すこと」が、その人のそもそものミッションだったわけですから。奇跡のような結果を求めることはありません。当然、現有戦力そのものを最大化させるための補強についての意見も聞きます。しかし、「現有戦力で期待値以上のパフォーマンスをいかにしてたたき出すか」を、いつもプロの仕事の流儀として求めるのが私の考え方です。

 プロの世界ですから「頑張りました」という自己申告は通用しません。結果が全てです。ミッションを達成できればその人は「頑張った」ことになるし、達成できなければ「頑張らなかった」ことになります。明確な結果を残したヘッドコーチとは継続的に契約を結ぶことになりますが、結果を出すための意識や姿勢を見て、「来季への期待が高い」と判断すれば、結果が出ていなくとも契約は継続になります。いずれにしても、次年度の契約とは相応の成果に対して敬意を表したものであり、そこで初めて年俸や契約条件を「交渉」することになるのです。