「兜町の大家」平和不動産にファンドが株主提案、買収争奪戦の機運高まる理由【スクープ完全版】Photo:PIXTA

東京証券取引所や大阪証券取引所のビルを保有する東証1部上場の平和不動産が、取引所を運営する日本取引所グループからの天下り受け入れを禁じる株主提案を受理したことが30日、関係者への取材で分かった。東京・日本橋兜町周辺に優良不動産を抱える同社は「兜町の大家」と呼ばれ、資産価値に対して株価が割り引かれた割安株として知られる。今回の株主提案は、買収防衛策の期限が切れる今年6月の株主総会を見据えたファンド側の揺さぶりとみられ、平和不動産を巡る大争奪戦に発展する可能性が急浮上した。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)

全国の証券取引所ビルを保有
「第2のユニゾ」買収戦勃発か

 株主提案を行ったのは香港の投資運用会社、リム・アドバイザーズ。リムは現在、無線通信機器などを手掛けるユニデンホールディングスにも株主提案を行っている、アクティビスト(物言う株主)ファンドだ。

 リムは平和不動産に対し、日本取引所グループ(JPX)や関連会社の役員・従業員として5年以上勤務した者を、会社提案の取締役候補にできないよう定款新設を求めたもようだ。

 実際、平和不動産の社長には代々、東証出身者が就いている。2006年以降、金原策太郎氏、吉野貞雄氏、岩熊博之氏と続き、現在の土本清幸氏も東証の上場部長や取締役専務などを歴任し、19年12月に平和不動産社長に就いた。

 平和不動産は、1947年に日本証券取引所が解散された際、全国の証券取引所などの施設を取引所や証券会社に賃貸する目的で設立された。現在はJPXとの親子関係はないが、平和不動産は歴史的に関係が深いJPXの天下りを慣例として受け入れてきた経緯がある。

 リム側の主張によれば、その天下りの慣例こそが、平和不動産の成長が阻害されている要因だという。一体どういうことか。