集中の超プロが「自宅の照明は仕事向きじゃない」と断言するワケPhoto: Adobe Stock

集中力が落ちた。
あの頃は、もっと没頭できたのに──

私たちは今、スマホやPCに1日平均11時間を費やしていたり、リモートワークによる働き方の変化に追われていたりします。
「人のパフォーマンスを可視化するメガネ型デバイス JINS MEME」「世界で一番集中できる空間 Think Lab」などを手掛けてきた井上一鷹氏の著書『深い集中を取り戻せ』では、集中のプロとして、「これからどのように働けばいいのか」「どうやってパフォーマンスをあげるのか」を語ります。
脳科学的に、「やらされ仕事は4ヵ月しか続かないけれど、やりたいことは4年続く」と言われます。あなたが、夢中で何かに没頭できた体験。やらされ仕事ではなく、自らやってみようと思えたこと。何が原因かわからないけど、いつの間にか、『深い集中』が失われたすべての人へ、ノウハウをお伝えします。

「五感を活性化させる刺激」を与える

 いかにすれば集中できるかどうかを考えたとき、実は「照明環境」が重要になってきます。

 私の所属するThink Labでは、経済産業省の国家プロジェクトにて、私たちの計測で五感刺激が集中にどの程度影響を与え、効果を示すかの実証実験をおこないました。

 その結果、本書で紹介する五感刺激をすべて実践した人は、集中の度合いが8.8%もアップしました。

 五感の中でも特に集中に関係するのは、「視覚・聴覚・嗅覚」です。

 この記事では、「視覚」について説明しましょう。

「照明の調光・調色」で視覚を最適化する

 一般的なオフィスの照明は「寒色系の昼光色」という光の種類です。

 これは、いわゆる「ブルーライト」という青い光の配合が多いのが特徴です。

 この光は、昼の空の光を模して作られています。

 一方で、家の照明は、夕方の空の光を模した「暖色系の電球色」であることが多いです。

 これは、一般的に家は夕方以降に過ごす場所だという前提で照明が設計されているためです。

 元々、自宅はワークではなく、セルフや家族とのリレーションのための場所なので、「リラックスモード」に適した照明になっていると思います。

 我々人類は、基本的に昼に活動する動物です。

 そのため、昼の空の光を浴びないと、頭が覚醒しにくいようにできています。

 人の体内時計は、光のバランスと食事のタイミングでマネジメントされているため、このリズムが狂ってしまうと、仕事モードに切り替えることが非常に難しくなってしまいます。

 リモートワークで家に1日中こもって仕事をする場合など、ずっと暖色系の光を浴びていると、集中に影響が及ぶことになります。

 そこで、ぜひやっていただきたい技法が、「時間帯で照明の色みを変更する」という方法です。

 最近では、リモコンによって照明の色みを調整できる照明が多いでしょう。

 それを利用して、仕事に取り組んだり、集中力を高めたい時間帯には「寒色系」を選び、仕事が終わってリラックスしたい時間帯には、「暖色系」に切り替えるのです。

 時間を決めて調光することで、体内時計も整い、コンディションもよくなります。

 この効果は非常に高く、異なる照明下で2日間の単純作業をおこなうという私たちの実験では、1日目に調光・調色をした群としていない群で、翌日の被験者の集中の度合いが「8.2%」も異なるという結果が出ました。

 簡単な方法ですが、意外とできていない人が多いので、ぜひ取り入れてみてください。

 また、最近の研究では、ブルーライトは「上部から目に入ってきた場合」に、特に脳を活性化する効果が強いそうです(網膜の下部に入ったブルーライトに覚醒効果がある)。

 ですから、できればタスクライトのような形で、前方の上のほうから光を浴びると、より目の前のことに集中しやすくなります。

 ぜひ、気をつけてみてください。

井上一鷹(いのうえ・かずたか)
株式会社ジンズ執行役員 事業戦略本部エグゼクティブディレクター 兼 株式会社Think Lab取締役
NewsPicksプロピッカー(キャリア)。
大学卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルにて大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事後、ジンズに入社。商品企画部、JINS MEME事業部、Think Labプロジェクト兼任。算数オリンピックではアジア4位になったこともある。
著書『深い集中を取り戻せ』(ダイヤモンド社)が好評発売中。