しかし、米韓外相会談の発表文には「北朝鮮」という国名はなく「朝鮮半島の非核化のための日米韓3カ国協力をはじめ、共通する安全保障目標達成のために努力する」とある。

 他方、韓国外交部の報道資料によれば「両外相が朝鮮半島の完全な非核化および恒久的平和のために引き続き緊密に協調していくことにした」として韓国の立場に則った核問題解決のシナリオが描かれている。しかし、「日米韓協力」は省かれた。

 米国にとって最も重要なことは韓国を日米韓協力の強化に引き込むことであり、韓国の姿勢はこれに同調しているとは言い難い。

 米国が「朝鮮半島の非核化」と言ったのは、北朝鮮を対話に引き出すためだけではなく韓国側を引き寄せるためでもある。

 韓国にとって「朝鮮半島の非核化」は、1991年12月に合意した「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」から2018年6月の「シンガポール共同宣言」に至るまで、この用語が北朝鮮核交渉の骨子となってきた。シンガポール共同宣言に戻ることにこだわる文在寅政権にとって日米韓協力の出発点になるからである。

日米韓外相会談と
日韓外相会談

 日米韓外相会談は5日午前(現地時間)ロンドンで約50分間行われ、バイデン政権の新たな対北朝鮮政策を滞りなく進め、北朝鮮を対話のテーブルに着かせるための方策が話し合われた。3人の外交トップは朝鮮半島の完全な非核化のために政策の連携が重要との点で一致し、協力の強化を確認した。また、この席では中国問題は議題にはならず、北朝鮮核問題だけが扱われたという。

 日米韓に引き続き日韓外相会談が約20分間行われた。両外相は北朝鮮核問題での協力を確認したものの、慰安婦問題と朝鮮半島出身労働者問題、福島原発の処理水の問題では従来の双方の主張を繰り返しただけで前進はなかった。ただ、昨年2月以来の、両外相にとって初めての会談が行われたことは、今後の日米韓の協力のための一歩となるだろう。