パッシブとインデックスの
本当の意味での違い

 しかしながら、インデックス投資であれば何でも良いのか?というと、必ずしもそういうわけでもない。バフェット氏もいくつかのインデックスの中から「S&P500を買いなさい」と言っている。厳密に言えば、パッシブ運用というのは「マーケット全体に連動することを目指す」というものであるのに対して、インデックス投資というのは「特定の指数に連動することを目指す」という微妙な違いがある。

 例えば「日経平均」というのは一つの指数だが、東証1部に上場する約2000以上の銘柄の内、日本を代表すると言われている225銘柄の平均であり、「ダウ・ジョーンズ工業株平均(以下、NYダウ)」はわずか30銘柄の平均株価である。

 したがって、日経平均やNYダウに連動するのはインデックス投資ではあったとしても、必ずしも市場全体に連動するパッシブ運用であるとは言い切れない。極端なことを言えば、日経平均というのは225銘柄に投資するという“アクティブ投資”といえるかもしれない。

 すなわち、インデックス投資の場合、どの指数を選ぶかが問題なのである。しばしば言われることだが、日経平均は銘柄数が少ないため「値がさ株(1単元あたりの株価の水準が高い銘柄)」の影響を強く受ける傾向がある。

 例えばファーストリテイリングやソフトバンクグループといった銘柄の寄与度が大きいため、必ずしも日本の株式市場全体を表しているわけではない。逆に言えば、そういう特徴と偏りがあるということを理解していれば、日経平均を上回る運用成績を上げることはそれほど難しいことではないといえるし、現実にそれを上回るパフォーマンスを上げ続けているファンドマネジャーもたくさんいる。

 一方、米国を例に取ると、バフェットが推奨するS&P500はかなり幅広く分散されているし、銘柄の入れ替えも比較的多く行われているため、その時代に合った銘柄構成となり、より米国全体の実態を表しているといって良いだろう。したがってS&P500を上回る運用成績を上げるのは容易なことではないかもしれない。

 バフェット氏のような優れた投資家でない限りは、インデックス投資をしていた方が無難といえるだろう。

 ただ、そのS&P500でも内容をよく調べてみると、最近では時価総額の大きなGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftのそれぞれ頭文字)といわれる5銘柄の影響が大きく、米国市場が好調だといわれるがこれら5銘柄を除くと、TOPIXとほとんど変わらないという点も指摘されている。

 したがって、本当の意味でのパッシブ運用は、世界中の市場のそれぞれの時価総額の割合に応じて投資する、あるいはGDPのような経済規模に合わせて投資をするということであり、それが最も合理的な方法ではないだろうか。現在であれば、そういう国際分散投資でパッシブ運用のできる投資信託は少ない金額でも容易に購入できる。

 アクティブとパッシブ、前述したように理屈で考えれば全てのアクティブ投資家の平均であるパッシブはコスト分だけ有利であるということはいえるが、どちらが絶対に正しい方法であるということはない。人それぞれの考えに応じて投資をすれば良い。ただし、特定の指数(インデックス)のみに偏るのは避けた方が良いだろう。

(経済コラムニスト 大江英樹)