自分のホンネはさらさずに、相手のホンネだけを、一方的に探り出せないものか――。

 本連載で紹介するのは、そういう心理テクニックである。

 人間関係の多くは、ホンネの探りあいによって決まる。相手のホンネをつかんだほうが心理的に優位に立つことができ、会話をリードすることができる。逆に、ホンネを読まれたほうは、相手のいいように振り回されてしまう。相手のホンネを読む一方で、絶対にこちらのホンネは読ませないということは、相手を制するためにとても大切なことなのである。

成功したければ
「お人よしに」はなるな

 お人よしになってはいけない。自分のホンネをみすみす相手に読まれてはいけない。自分のホンネ、自分の望みは、最後まで隠し通すことが必要である。ホンネを読まれると、組しやすい人物、とるに足りない人物だと思われてしまうからだ。

 イタリアの思想家マキャベリは、『君主論』の中で、次のように述べている。

信義を守って、奸策を弄ろうせず、公明正大に生きることは称賛に値しよう。だが、現実の世界を見ると、信義など露ほども意に介さずに、奸策を用いて相手の頭脳を混乱させる人のほうが、大きな成功を成し遂げている。結局は、ずる賢く立ち回っている人のほうが、信義に基づく人を圧倒できるのだ。

 まさに筆者がいわんとしていることを見事にまとめている。人を心服させたいと思うのなら、信義やら、正義やらを振りかざしていてはダメなのだ。

 相手を思いやろうとか、信義を大切にしようとか、正義を守ろうという態度は、たしかに立派だ。しかし、そういうやり方で人とつきあおうとしていたら、時間ばかりかかって、とても現代社会のスピーディさについていけないし、信義を大切にするためには精神的にも金銭的にも大きなコストがかかる。

 真面目さだけでは、どうにもならない時代に突入しているのだから、使うべき方法もそれなりに変化させなければならないといえるだろう。