業務の規模や性質に応じて
自動化の方法を使い分ける

 次に話題は業務の自動化に移った。ソフトバンクでは業務が定型的か、非定型的かという尺度と、業務で扱う情報量の多さという2つの尺度で、自動化に使用する手法を使い分けているという。グラフにすると以下の図のようになる。

「DXの第一歩はペーパーレス」10年前に紙をなくしたソフトバンクは、今どうなっているのかソフトバンクでは業務の自動化に、このような手法を使い分けている。縦軸を業務で扱う情報量の多さ、横軸を業務が定型的か非定型的かとしている 写真:ソフトバンク
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 定型的な業務で、扱うデータ量が多い場合はパッケージソフトウェア。業務がもう少し非定型的になると独自システムやAI(Artificial Intelligence)が選択肢に入ってくる。扱うデータ量が少ない、個人レベルの自動化ならVBA(Visual Basic for Applications)やSQLも選択肢となるという具合だ。

人事部門:新卒採用にAIを活用

 吉岡氏は事例として人事部門がAIを活用している例と、社内文書の電子押印の例を紹介した。人事部門の例では、新卒採用のエントリーシートの合否判定や、動画面接にIBMの「Watson」を活用しているという。エントリーシートでは、過去のエントリーシートと合否結果を学習させ判定モデルを作り、新規のエントリーシートをWatsonに投入し、自動的に合否を判定させている。Watsonが合格判定した場合は合格とし、不合格判定した場合は人事担当者が確認して最終合否判断を行っている。加えて、学生からの一次問い合わせ対応にもWatsonを活用し、チャットボットで自動化しているという。

 動画面接では、エントリーシートと同様のフローで、学生が提出した動画をAIで分析し、合否判定している。AIの活用により、エントリーシートの確認に割いていた時間を75%削減、動画面接では85%削減できたという。さらに、統一された判定基準で評価できている点も、大きな効果だとしている。

電子押印&電子署名:紙でのやりとりが必要な文書も将来的に100%電子化

 電子押印のシステムは、主に先述の「グレーリスト」と「ホワイトリスト」の一部、つまりシステムによって電子化が可能な文書や、これまで紙でのやりとりが求められていた契約書などの文書を対象にしている。これを電子押印、電子署名のシステムを利用し、100%電子化することを目指す取り組みだ。

 政府が2024年度までに行政手続きにおける押印を原則廃止とする方針を打ち出していることから、2022年度には民間企業宛ての書類を100%電子化し、2024年度には行政手続きの書類も100%電子化する予定だという。そのスケジュールから考えて、2021年度内には、ソフトバンク社内の電子押印のシステムは整備を済ませるとしている。

 電子署名、電子押印には、すでにあるソフトバンク独自の稟議、押印申請、書類保管のシステムと、社外向けには米DocuSign社のサービスを連携させて利用するとしている。新型コロナウイルス感染症の感染拡大で基本的には在宅勤務となっているが、それでもソフトバンクの調べでは平均で1日当たり110人が押印のために出社しているという。電子押印のシステムが稼働を始めれば、押印のための出社をゼロにできると見込んでいる。