白河 裸の王様にならないためにも、上司は自分を客観視することが大事だと思います。ただ、客観視するのは怖いというストッパーが働くと思うんですよ。だから上司自身がそのストッパーを外すためにも、組織の心理的安全性が必要なのかなと。今回の本で書いたのは「働かないおじさん」だけでなく、管理職層などの「粘土層」の「働くおじさん」も問題があるということです。

石井 上司も部下もお互い至らないところをちゃんと認め合えると、安心していろんな挑戦ができるんですよね。

グーグルでもチェック、「上司は弱みを見せるべき」
マネジメント方法を一新しよう

管理職よ、裸の王様になるな!企業戦士のよろいを脱ぐために必要な職場環境とは石井遼介(いしい りょうすけ)
株式会社ZENTech取締役。 一般社団法人日本認知科学研究所理事。 慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科研究員。 東京大学工学部卒。シンガポール国立大経営学修士(MBA)。 組織・チーム・個人のパフォーマンスを研究し、アカデミアの知見とビジネス現場の橋渡しを行う。 2017年より日本オリンピック委員会より委嘱され、オリンピック医・科学スタッフも務める。 2020年9月に出版した『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)は現在13刷・5.5万部(電子版除く)を記録し、読者が選ぶビジネス書グランプリ「マネジメント部門賞」を受賞。

白河 グーグルを取材したときに、心理的安全性が高い職場かどうかをチェックする方法を教えてくれました。そのうちの一つが、「上司は部下に弱みを見せているか」でした。上司が弱みを見せたときに初めてチームの心理的安全性が獲得されるんですね。だから、上の立場にいる人間から変えていく必要があるのかなと。

 石井先生はさまざまな企業研修で心理的安全性が高い職場作りを実践していると思いますが、具体的にはどうやっているんですか?

石井 経営層からの研修が可能な場合は、まずは「この組織で心理的安全なチームを目指す」と旗を立ててくださいと、研修をする会社の社長や役員の方々に伝えています。彼らの部下には、上級管理職の方々がいらっしゃるわけです。その上級管理職との間で、心理的安全性を得られるように、ご自身の行動を変えていきましょうと伝えています。

白河 上からなんですね。周囲を萎縮させてパワハラみたいなマネジメントをしている上司っていますよね。でもそういう人は、案外実績があったりする管理職になっている。功績があることと、マネジメントがうまいことは相関しない。そういう意味では、今、全ての管理職層がマネジメントのやり方を変えなければいけない時期に来ていると思います。

石井 そうですね。マネジメントのスタイルを過去のものから変える必要があると思っています。例えば、メンバーが業績未達のときに、上司がやるべき効果的な行動って、罰を与えることではなくて具体的に業績が上がるアイデアや工夫を出すことじゃないですか。マネジメントの方法を変えていくと、心理的安全なチームが作れる一歩を踏み出せるかなと思います。