冨山 米アップルもEVに参入しようとしていますね、「Apple Car(アップルカー)」です。アップルは工場を持たないファブレス企業です。工場を持たなくても、自動車メーカーになれる。自動車産業を大きく変えるでしょう。

宮田 どんどん分野の垣根を超えています。一方で、米アップルCEOのティム・クックは、「もうモノを売ることはやめます。人々に健康をもたらす企業を目指します」と言っています。その心は何かというと、デバイスを売って利益を得たいわけではない、パーソナルデータを通じて皆さんの健康を支える企業になるんだというわけです。

 テスラもアップルも、中国のアリババグループも、さまざまな領域をデータでつなぎながら、領域を横断した新しい未来をつくろうとしています。そして、いずれも打ち出しているのは自社の利益追求ではなく、社会の未来を考えたビジョンなのです。

冨山 こういう思考のできる経営者が、日本は非常に少ないです。
 
 私は国際会議の場で日本の経営者の発言を聞く機会もありますが、自分の会社の武勇伝を話して終わってしまうことがあるんですよ。それで、グローバルリーダーたちはきょとんとして質問も出ず、しばらくシーンとなる…彼らはその先を待っているんです。「So What?」、だから何が言いたいんだと。しかしご本人は自己完結していて、それ以上何を求められているかわからない。

宮田 それ、私も時々見かける光景です。自分がやってきたことは何か、それを踏まえて、どう社会に貢献したいか、皆さんとこういう対話をしたい、という話を求められているのに、序盤でまさかの終わり。

 これからは社会への貢献という視点が、もっと問われてきます。SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境、社会、ガバナンス)に積極的な取り組みをする企業への評価が加速しているので、ソーシャルグッド(社会に良いインパクトを与える活動やサービス全般)への貢献がいっそう求められています。そういう視点から企業活動を「コ・クリエーション(共創)」していく時代が来ているんです。