入国管理は一番効率的な隔離策なのに
水際対策の失敗を批判しないマスコミ

 これを認識していれば、もっと効果的な対策が取れたのではないだろうか。コロナ感染を抑えるのはコロナウイルスとの接触を避ければよいので、人との接触を避けるのが手段である。

 もちろん、最初から台湾のように動けばよかったのだが、その後であっても、変異ウイルスを避けるために入国審査を厳しくすればよかった。

 2020年12月までにイギリス型、2021年5月までにインド型変異株が日本に入り、すでに市中感染が確認されている。他にも、南アフリカ型、ブラジル型、フィリピン型の変異株がすでに確認されている。

 これら変異株が入らないようにするためには、入国者を2週間、隔離さえすればよい。ホテルを用意して宿泊させ、外出や他の部屋への移動を禁じる。部屋の映画は見放題にする。ゲーム機やパソコンやランニングマシンを配布してもいい。

 隔離させるための費用を含めて、ホテル代は1日1万円でいいだろう。どうしても高級ホテルに泊まりたい人がいれば、追加の自己負担で泊まれるようにしてもいい(高級ホテルが、感染可能者宿泊施設になることを了承してくれればの話だが)。

 なんなら、1日当たり1万円の待機手当を払ってもいい(最終日にまとめて14万円払った方がいい)。1人1日2万円で、14日間隔離する費用は28万円である。どれだけの入国者がいるかといえば、昨年4月3日に全世界からの入国禁止措置を取ってからの日本への入国者数は、2020年4月~2021年3月で、30万6340人である。これに28万円を乗じると約858億円だ。

 もちろん、各国での感染や変異株の状況に応じて早めに対応すればいいだけであるので、すべての国からの入国者に2週間の完全待機を求める必要もない。これは最大限必要となる予算である。

 一方、2020年度のコロナ対策の3回の補正予算の合計額は、実に77兆円だ。858億円で変異株の流入を防げることができれば、随分安いものではないか。変異株の感染者を見つけて、そのクラスターを探すという作業よりも確実である。

 韓国は、なんとか感染者の激増を抑えている。韓国でも変異株は流入しているようだが、その規模は日本よりずっと小さいようである。2021年5月4日の韓国・聯合ニュースによれば、「新型コロナ変異株3種の新規感染者97人 累計632人」とのことである。

 日本で厳しい入国管理ができないのは、憲法で基本的人権が保障されているからだという議論がある。しかし、日本国憲法第22条第1項には、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」とあるだけだ。公共の福祉を拡大解釈されてはかなわないが、自由に移転してコロナウイルスをまき散らすことは公共の福祉に反するといえるだろう。

 しかも、2週間と限定しているし、移動を制限する場所はホテルである。憲法があるから入国管理できないというのは、何もしないことの言い訳だ。

 また、マスコミが入国管理の失敗を批判しないのも不思議なことだ。政治家の言葉尻や、首長のワクチン接種の“横入り”を非難するのも結構なことだが、首長が横入りしても、本来ワクチンを接種できる人が1人後回しになっただけである。入国管理の失敗はおびただしい数の感染をもたらした。批判のバランスを失しているのはなぜだろうか。