分散投資の目的は、最悪を避けること

 資産運用の世界には、「すべての卵をひとつのかごに入れるべからず」という言葉がある。ひとつのかごに入れておくと、かごを落としたときにすべてを失うことになりかねないが、2つのかごに分けておけば、片方を落としても半分は残るからだ。もちろん、3つ以上のかごに分けておけば、「すべてを失う可能性」は一層小さくなるわけだ。

 ここで重要なのは、残る卵の数の期待値は、かごの数とは関係ない、ということである。2つのかごに分ければ、かごを落としたときに割れる卵の数は半分になるが、どちらかのかごを落としてしまうリスクは2倍になるからだ。厳密には2倍弱であるが、両方落とす可能性もあるので、期待値は同じなのである。

 したがって分散投資の考え方の基本は、期待値を高めることではなく、最悪の場合の被害を小さくすることだ。そのためであれば、最高の場合の利益を犠牲にしてでも、ということである。

 かごがひとつであれば、「すべての卵が助かるというベストシナリオの可能性」は高くなるが、ベストシナリオを追求するのではなく、ワーストシナリオの回避を最重要と考えるのである。