首都圏の住宅購入希望者は
都心派と郊外派に二極化

 筆者が所属するLIFULL HOME’Sが2021年2月に公表した「首都圏借りて住みたい街ランキング」は、1位の「本厚木」を筆頭に「千葉」「町田」などがランキング上位に登場し、準近郊・郊外でも都心方面へ乗り換えなしでアクセス可能な路線沿いの駅に多くの人が関心を寄せるという“郊外化”の傾向が明らかになった。

 一方、「首都圏買って住みたい街ランキング」では、比較的住み替えしやすい賃貸ユーザーの意向とは異なり、一度物件を購入してしまうと簡単には買い替えできないという心理が働いてニーズは依然として利便性重視の傾向を示し、「勝どき」「白金高輪」「目黒」などが上位となった。ただし3位「本厚木」、7位「柏」など(資産性が大きく下がらない程度に)通勤・通学も可能な準近郊のベッドタウンへの関心も同様に高いことが明らかになった。

 つまり、購入希望者は「都心周辺の利便性&資産性の高いエリア」と「生活環境が整っていて安心して暮らせる準近郊エリア」に二極化しているのだ。

 総務省の「住民基本台帳人口移動報告」では、2020年の東京都への転入超過数は約3万1000人と、2019年の約8万3000人から62.5%減少した。また、東京都および東京23区では2020年7月以降2021年2月まで、8カ月連続で転出超過(=人口の流出)が発生している(3月は就職・新入学で毎年転入超過となる)。

 この“脱・都心”の傾向は、テレワークやオンライン授業が進捗すれば必ずしも便利な都心周辺に居住する必要がなくなり、コスト面でも感染リスクを避ける意味でも居住意向が一定程度郊外化することを示している。

 そして、最も興味深いのは、「郊外化」「二極化」といった首都圏での居住意向の変化が、近畿圏や中部圏などの他の都市圏では一切見られず、コロナ前と変わらずに中心部に一極集中していることだ。