大学までは問題なく卒業したけれど、社会に出たとたん、人間関係や組織への適応などが上手くいかなくなり、仕事に就けずに無職になる。そんな“大卒無業者”の状況に追い込まれる人たちの存在が、顕在化するようになったという。

大卒でも就職・進学できない若者は
約8万6000人に

「全国の地域若者サポートステーション(厚労省が委託する就労支援事業:通称サポステ)に来る人たちの傾向を見ると、大卒の肩書を持った人たちは、(医療的背景があるケースを除いても)20~30%くらい。僕らの所に働くことにつまずいた大卒者が来ること自体、予想されていなかったと思うんですね」

 そう説明するのは、10月31日に『大卒だって無職になる “はたらく”につまずく若者たち』(エンターブレイン)を上梓した、若者の就労支援団体『NPO法人「育て上げ」ネット』(東京都立川市)の工藤啓理事長。

 同ネットに、大卒の肩書きを持った無業者が相談に訪れた数は、1000人を超えるという。当連載にも、以前記事で紹介した1年に300社落ち続けた男性を始め、メールで寄せられた体験談の中には、大卒や大学院を修了したような高学歴の人たちが数多く見受けられた。

「結局、働くというところまで見てもらえないで、面接で落ちるんですよ。名もない大学卒だと、紙の段階でふるいにかけられる。人物本位とうたっていながら、人物に会うまでに戦力になるかどうかのハードルがあって、そこを超えられずに働く場まで行けない人たちが結構いるんです」(工藤さん)

 同書によれば、警察庁は、2011年には、大学生ら150人が、就職活動の悩みを理由に自殺したと発表。また、文部科学省の学校基本調査速報は、大卒者で就職も進学も“できなかった”若者は約8万6000人に上ると推計しているという。