ケース(1)-1 60歳でフルリタイヤ(60〜65歳)

【60〜65歳までにおける、Iさんの収支など】
・年間収入額:ゼロ(金融資産から取り崩し)
・年間支出額:747万6000円
・追加費用:車の買い替え費用650万円、自宅のリフォーム費用500万円
・金融資産額:2039万2000円(65歳時点)

 Iさんのご希望通り60歳でフルリタイアしたとし、まずは60〜65歳までの家計収支を試算していきます。

 公的年金の受給は65歳以降から開始するため、ここでは60〜65歳までの支出は保有している金融資産から取り崩す形で試算していきます。

 Iさんの年間支出額は57歳現在で747万6000円でした。フルリタイヤ後も支出額を変えない場合は、65歳までの5年間で747万6000円×5年=3738万円を金融資産から取り崩すことになります。

 先ほど試算したように、Iさんが60歳時点で保有している金融資産額は6927万2000円です。そのため、6927万2000円−3738万円=3189万2000円が、65歳時点で手元に残ることになります。

 さらに、相談文に「4年以内に車を買い替える予定」と書かれているので、その費用も金融資産から差し引きます。買い替え費用を250万円とすれば、65歳時点の金融資産額は3189万2000円−250万円=2939万2000円になります。

 しかし、この試算には二つの懸念点があります。

 一つ目は、車の買い替え費用です。57歳というIさんの現在の年齢を考えれば、車の買い替えは1回では終わらず、今後2回、ないし3回はある可能性が高いのです。そのため、さらに400万円を車の買い替え費用に計上しておきましょう。

 二つ目は、5年以内に予定しているという「自宅の修繕・リフォーム」の費用です。想定費用の記載がありませんが、Iさんは現在戸建てにお住まいですから、相応のリフォーム費用がかかるはずです。

 リフォームをどこまで行うのかは定かではありませんが、給湯器やガスコンロなどの買い替え費用、家電の買い替え費用を含めて500万円を計上するとします。

 これらの懸念点を考慮して、費用を金融資産額から差し引きます。2939万2000円−400万円−500万円=2039万2000円になります。