ケース(1)-2 60歳でフルリタイヤ(65歳以降)

【65歳以降における、Iさんの収支など】
・年間収入額:260万円(公的年金)
・年間支出額:747万6000円

 次に、公的年金が支払われる65歳以降の収支を確認しましょう。Iさんの年金額は年間で300万円程度と記載があるので、手取額を260万円とします。

 支出が変わらないとすれば、年間収入260万円に対して年間支出は747万6000円なので、487万6000円の赤字となります。つまり、それが金融資産の年間取り崩し額になります。

 Iさんの場合、67歳で住宅ローンが完済となることから、487万6000円の取り崩しは65歳から67歳までの2年間です。先ほど試算したように65歳時点で保有している金融資産額は2039万2000円でした。そのため、67歳時点の金融資産額は2039万2000円−487万6000円×2年間=1064万円になります。

 住宅ローン(月13万1000円)完済後の年間支出は、747万6000円−13万1000円×12カ月=590万4000円まで減額となります。収入260万円、支出590万4000円ですから、68歳からの収支は330万4000円の赤字です。

 この赤字は金融資産から取り崩すことになりますが、67歳時点の金融資産額は1064万円です。そのため、3年強、つまり72歳前に金融資産が底を尽くことになります。

 72歳で底を尽いてしまうのであれば、とても60歳でのフルリタイアを後押しすることはできません。フルリタイヤ後に仕事をしない場合、どれくらい家計が厳しくなるかをIさんに理解していただくために、今回はあえて現状のままの収支で試算してみました。

 では、Iさんのご希望通り60歳でフルリタイアするための処方箋を考えてみましょう。こちらも時系列に沿ってケースに分けて紹介します。