クレーマー対応の心構えは、マタギに学べ!

 以前、マタギの老人が「いざというときの気構え」について語るのを聞き、これはクレーム対応にも参考になる考えだと思ったことがあります。

 マタギとは、主に東北・北海道地方でクマなどの野生動物を狩猟する人たち。昨今の異常気象の影響なのか、クマやイノシシによる被害が後を絶たない中、厳しい自然と正面から向きあって大型獣との真剣勝負に挑むなりわいです。その一方で、マタギは高齢化や後継者不足が深刻で、減少の一途をたどっている現状があります。いわば、マタギのほうが「絶滅危惧種」です。

 そのマタギの老人は「窮したら、肝を据えて開き直れ」と語っていました。どんなベテランでも、山に対する畏敬の念を忘れず、日々、用心を欠かさない。ポイントは、その“用心”に具体的なイメージがある点です。万が一の場合を想定し、日々、イメージトレーニングをしているというのです。

「いきなりクマと出くわしてしまったときは、クマの目を見ながら、ゆっくりと後ずさりする。もし、襲ってきて逃げられないときは、歯を食いしばって、大声を上げて抵抗する。本当に戦えば、勝てる見込みはわずかしかない。だが、クマが『こいつは手強い』と感じれば、逃げて行く場合が多い」

「歯を食いしばる」というフレーズがなじむのは、いまやスポーツや武道の世界ぐらいだと思われるかもしれません。しかし、クレームの現場ではグレーゾーンが拡大し、クレーマーに出くわすリスク、人としての胆力が試される、“歯を食いしばる”場面はむしろ増えているといえます。これは時代錯誤でしょうか? しかし、時代に合わないと切り捨ててしまうのは惜しいと思うのです。