気構え“胆力”と“クレーム対応力”

 お客様の「不満・意見・指摘」であるクレームは企業にとって大切なものであり、しっかり対応して“満足”を与え、ファンにする。こうした“CS(顧客満足度)”を重視する考え方が今は浸透・定着してきました。いっぽうで、CSが行きすぎると、「すべてのお客様に満足してもらわなければならない」「お客様は神様だ」となり、一般のお客様だけでなく、悪質なクレーマーにも満足してもらわなくてはならない事態になります。善悪(白黒)が見極められない、「玉石混交」な状態の中でハードなクレームが発生しやすい事実もあるのです。
 
 接客上、大切にしたい真心もありますが、ときに視野を狭めてしまいます。白黒を判断しようとしなければ、神様は神様でも“貧乏神”や“死に神”かもしれません。

 例えば、アパレルショップをイメージしましょう。客の入りはまばらでいつものような平和な現場です。そんなとき、商品を整理していたあなたに向かって速足で詰め寄ってくる中年の女性客。目の前に立つや否や開口一番、

「ちょっとどういうことなのよ!!」

 いきなり怒鳴られてクレームを受ける局面は、まさに“青天の霹靂(へきれき)”。一瞬で頭が真っ白になるのは当たり前です。しかし、怒号を浴びても、即座に悪質なクレームとは判断できません。風貌や剣幕から、勝手に悪質なクレームだと判断し、相手の怒りが大炎上、二次クレームに発展することは避けなければなりません。

 人生の達人ではない私は、驚くような場面に遭遇した時にはパニック状態にならないようにしています。驚いても、パニック状態の時間を少しでも短くできるように、いざというときのための“気構え”があると言い換えてもいいでしょう。

 これは、先ほどのマタギの流儀につながると思います。怖くても歯を食いしばってでも、目をつむってはいけないのです。