クレーム対応をなりわいにしている私ですが、クレームを受ければうれしくはありませんし、怒鳴られたりすごまれたりしたら気が滅入ってしまいます。しかし、こうしたいざという時のための「気構え」や「心構え」を、警察学校時代の貴重な経験から身に付けました。警察官をやめて25年以上たった今でも、クレーマーと対峙中の、私のお守りともいえる護身術です。

臍下丹田呼吸法

 方法を説明します。私が、こういうときに行っているのが「臍下丹田(せいかたんでん)呼吸法」。いきなり怒鳴られ頭が真っ白になったときの対処法です。東洋医学で、人間の体内の気が集まるといわれるヘソの下と恥骨との間にある丹田に力を込めて、ゆっくりと息を吐き出す“気(き)”を意識した呼吸法です。

 やや精神論的で、懐疑的な方もいるでしょうが、頭に血が上り、会話が通じなくなっているモンスターと対峙するために覚悟を決める、いわばスイッチのようなものでもあります。
 
「ここで買った商品、1~2回着ただけなのにダメになった!」
「すみません、申し訳ありませんじゃすまないだろ!」
「悪いと思っているなら、責任をとれ」
「今すぐ他の服と交換くらいしてよ。それぐらいの誠意を見せてよ!」

 事情を説明しても、こうした怒号がやむ気配はありません。さらには特別待遇などの対応を求めてきます。

 こうしたときは、すぐさま何か気の利いたことを言おうとするのではなく、“臍下丹田”を意識して、相手の目を見ながら静かに呼吸を意識しましょう。そうしながら話を聞くと、それだけで不思議と気持ちが強くなってきます。すると、相乗効果か相手も「手強い」と感じるのか、結果的に、手詰まりに見えた状況が劇的に好転したりするのです。