日韓首脳会談は
実現するのか

 朝鮮日報は8日の記事で、G7サミットが4日後に迫っているにもかかわらず、日米韓首脳会談の日程を決められずにいると報じている。

 同記事の内容は下記の通りだ。

○米国は3カ国首脳会談の開催に前向きだが、最も懐疑的なのは日本である。文大統領の任期中は、歴史問題に突破口を開くのは難しいとみており、韓国との接触そのものを嫌う「韓国対話無用論」が盛んであり、「韓国とは多国間会議の場で短時間対面する略式会談もやらないというのが日本国内の主な流れ」だ。

○韓国は3カ国首脳会談の必要性は感じており、今年に入って対日融和の基調になったが、北朝鮮が東京オリンピック不参加を表明した後、福島第一原発の処理水の海洋放出、竹島を日本領と記載した聖火リレー地図の問題で再び険悪になってきた。

 日本側の歴史問題に関する立場は、徴用工や慰安婦の問題で韓国側から「具体的な行動」「具体的な解決策の提示」がない限り首脳会談は意味がないというものである。

 韓国側についても聖火リレーマップに竹島を日本領と記載したことを巡り、オリンピックボイコット論が与党内次期大統領候補の間で広がっており、文政権としてもレームダックになりつつある中での日米韓・日韓首脳会談の開催は、与党内の反対を押し切るという困難な政治的ハードルが待ち構えている。それは文大統領と与党の対立に発展する可能性を高めることになる。

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 そうした中での徴用工判決である。韓国側の意図はどこにあるのか。竹島表記に関する国内の反対を押し切ってでも首脳会談をやろうとしているのか。

 文大統領はバイデン大統領と米韓首脳会談でどのような話し合いを行ったのか。米国に対し、日韓関係悪化の責任は日本側にあるといいたいのか。それとも歴史問題でこれまで文大統領が言ってきたことをほごにしてでも日韓関係を立て直そうとする方向にかじを切ったのか。

 いずれにせよ文大統領の意図はよくわからないというのがウソ偽りのないところである。

 文大統領がこれまで日米にとって信頼できるパートナーであれば、今回の判決を前向きに評価できたであろう。しかし、過去の言動を考えれば、しばらく様子を見るというのがベストのようである。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)