知能テストとして、よく使われるウェクスラー式知能検査を例として考えてみましょう。ウェクスラー式知能検査は年齢により、WPPSI(3歳10カ月~7歳1カ月)、WISC(5歳0カ月~16歳11カ月)、WAIS(16歳以上)に分けられます。

 それぞれ、一つの検査の中に言葉の理解、数、図形、記憶など、15種類の下位検査と呼ばれるものが含まれており、検査項目ごとに得点分布が設定されています。たとえばWISC -IVと呼ばれるものだと、年齢ごと、下位検査ごとに得点分布が求められていて、その測定データは図表2のように平均値に集まる、いわゆるガウス分布になると言われています。

 10歳の子どもの「言葉の理解」などでも、検査の平均値と標準検査が決まっており、ある子どもがその検査を受けて得た得点は、全体の中でどの位置にあるかまで求めることができるようになっています。

 これはいわゆる標準得点と言われるもので、平均が100、そこから標準偏差15の分布のどこに位置付けられるかで数値化されます。この数字こそ、ウェクスラー式知能検査で表される知能偏差値であり、一般的には75以下が「知的障害」とされています。

知能指数についての誤解
知能は明確に存在するものではない

 この知能指数は恒常的なものでなく、さまざまな要因で変動します。たとえば、知能検査と同じような課題を日ごろから訓練しておけば、当然その成績は上がります。つまり、IQや学歴は、人の総合的な能力を正しく反映するものではない、ということです。

 しかし現実では「IQが高いことはいいこと」という考えが、あたかも常識のように広まっています。たとえば誰かから「私はIQが150です」と言われたら、多くの人は「凄いですね」などとつい返答してしまうのではないでしょうか。