総合大学からコミュニティカレッジまで
種類で違う米国における大学のレベルと質

 米国の大学には、4年制大学と2年制大学が存在する。2年制大学であるコミュニティカレッジは日本の短期大学とは異なる特徴をもつので要注意だ。

 コミュニティカレッジという名の通り、「地域(コミュニティ)」の住民への教育に力を入れており、地域住民であれば誰でも入学できる学校なのだ。学費も安く、何らかの理由で大学に進学できなかった幅広い年齢層の人たちが通っている。

 英語力がなくても入れるため、実は「旅行会社などの留学エージェントがあっせんしている米国の大学進学は、このコミュニティカレッジであることがほとんど。しかし、米国の通常の大学レベルと比べると明らかに質が落ちるため、何も知らずに入ってしまうと、このレベルが米国の大学の標準だと勘違いしてしまい、そのレベルの低さに染まってしまう」と、栄氏は懸念する。

 ただし、コミュニティカレッジの特徴として、卒業後に4年制大学に編入できるカリキュラムが組まれている学校もあり、狭き門ではあるが、それを目指していったんコミュニティカレッジに入学する日本人もいる。

 また、4年制大学でも、ハーバード大やスタンフォード大などの私立の総合大学と州立大学、そしてリベラルアーツカレッジなどで、特徴が全く異なる(下図参照)。

 特に総合大学への進学は注意が必要だ。ネームバリューのある大学であっても大学院が中心の学術機関であるため、教授たちは主に大学院生の指導に当たり、学部生は大学院生の助手に任せてしまうことも多い。丁寧にフォローするきめ細かさはなく、授業のスピードが速い。そのため、留学生だと誰にも質問できず訳が分からないまま落ちこぼれてしまうケースもある。ハーバード大や米イェール大学に行けば安心というわけではないのだ。

 逆にリベラルアーツカレッジは少人数の全人教育で、一般教養からきめ細かく学ぶことができる。そのため、留学生にとっては安心できる環境だろう。

実際どこの大学を選ぶのが最善?
そこそこの学力でも入れる進学先

 要するに、世界ランク上位の名門大学に入るには、過酷な条件をクリアしなければならない。一方で、「取りあえず海外大学に行こう」と考えて留学エージェントのプランに従い質の低い環境に身を置くのでは、留学の意味がなくなってしまう。つまり、日本の海外大学進学は両極端なのだ。

 では、そこそこの学力で海外大学に入ろうとした場合、どの選択肢を取るのが一番良いのか。それは、リベラルアーツカレッジやそれなりのレベルの州立大学に入学し、4年間海外で学ぶ。そして、大学院進学時に名門大学の大学院を目指すことだ。

「高校生から海外大学専門の塾に通い始めても、相当優秀でない限り総合大学に入ることは難しい。仮に入れたとしても、授業に付いていけずに苦しむことになる。ですが、リベラルアーツなどの目の行き届いた少人数大学で4年間学べば、名門大学の大学院に進学することはそこまで難しくない」と栄氏は主張する。

 実際、大学受験時には自分の学力が届く範囲の海外大学に入り、最終的にハイレベルの大学院を卒業する日本人は多い。また海外は、日本のように一つの大学にずっと居座る感覚がなく、日本では学歴ロンダリングとやゆされるが編入学も当たり前に行われている。結局のところ、最終学歴が重視されるため、大学院のレベルが高ければ、その後のキャリアの選択肢は増え、選べる職種の水準も上げることができるわけだ。

 本当の意味でグローバル人材になるには、短期間の語学留学やカジュアルな海外経験ではなく、もっと濃く深い海外体験が必要だ。そう考えると、海外大学進学という一つの選択肢になるといえる。海外大学の前提を理解し、正しい進学ができれば、同レベルの国内大学よりもはるかに、生き抜く力の備わった人材になれる可能性がある。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic by Kaoru Kurata