ただし、騒音計で音を記録しているからといって、必ずしも裁判に勝てるとは限らない。

「裁判では、騒音の音量が環境省の基準(例えば午前6時から午後10時の間が55デシベル、それ以外の時間帯が45デシベル※地域によって変動あり)を超えているか否かが一つの基準になります。騒音計の数値が基準値を超えない場合、有利な証拠とならないことも多いです。仮に基準を超えた数値が記録できても、音が出る頻度や期間によって事情は異なります。一度のみならず根気強く騒音を記録し続けて、客観的なデータを積み重ねることが大事なのです」

裁判を避ける
最適な解決手段とは

 弁護士に相談することのメリットは、訴訟に向けた準備のみならず「裁判までもつれる前に騒音トラブルを解決すること」にもあると、桑田氏は語る。

「弁護士名を使って『騒音を立てないように』といった内容の通知書を、騒音主に送ることができます。私の経験上、この段階で騒音トラブルが解決するケースも多く、管理会社による注意喚起や個人間のやり取りで解決が難しそうな場合、利用してみるのも手です。通知書だけの依頼であれば、費用は5万~10万円ほどで済む例も多いです」

 弁護士名による通知書の送付に加え、騒音トラブルの解決手段として知っておきたいのが「民事調停」だ。

「民事調停は裁判のように勝ち負けを決めるのではなく,話し合いによって紛争の解決を図る手続です。申立人と相手方が顔を合わせる機会は和解の段階を除いて多くないため、話がスムーズに進めやすく、心理的なストレスも少ないでしょう。裁判を弁護士抜きで行うのは相当大変ですが、こちらは当事者だけでも十分に可能。弁護士に同席をお願いした場合でも、費用は裁判よりも安く済みます。何より裁判の場合、判決までに1年以上要することはよくありますが、民事調停ではポイントを絞った話し合いを行うので、数カ月で調停が成立し、事件を解決できる場合も多々あります」

 賃貸であればいざ知らず、ローンを組んで購入した分譲マンションで騒音被害に遭った場合、転居という選択肢は取りづらい。解決のために裁判を起こすにしても、心理的、経済的ダメージは計り知れない。負担のかからない対処法を知っておくことで、騒音トラブルに見舞われた際の損害は大幅に減らすことができるはずだ。