高齢者の孤独死に
振り回される管理組合

 同じ死亡でも、独居の高齢者が孤独死した場合はさらに大変なことになる。仮に法定相続人がすぐに特定できたとしても、死亡後の処理や遺品整理を法定相続人から拒否された場合は、管理組合で対応しなければならない。

 孤独死では多くの場合、特殊清掃が必要な状況となるが、一般に、特殊清掃業者の検索・紹介→現地調査→見積もり→理事会で承認→特殊清掃作業の実施→支払い、という流れになる。その費用を誰が負担するのか、ということも含めて、対応には時間がかかり、管理組合の負担は非常に大きいといえる。そして、ようやくすべてが片づいても、その物件は事故物件となってしまうのだ。

 余談だが、私の叔父も孤独死をしている。今から10年以上前のある冬の日、実の兄である私の父のところに、警察から電話があった。叔父が自宅で亡くなっていたので身元を確認してほしい、という連絡だった。叔父の家の新聞受けに新聞があふれているのを不審に思った近所の方が警察に通報し、死亡しているのが発見されたという。亡くなってから1カ月以上経過していたそうだ。66歳だった。

 未婚で独居の叔父とは年賀状のやりとり程度のつき合いで、詳しい生活実態は把握していなかった。当時80歳目前だった父だけで対応するのも難しいため、警察からの連絡を受けて、私も身元確認に同行し、葬儀や遺品整理、自宅の解体、父への相続など、さまざまな対応に翻弄されることになったものだ。

 そんなわけで、肉親が孤独死しただけでも大変なのだから、管理組合が“赤の他人”の法定相続人を調査し、滞納金の回収のために財産処分にも関わることがいかに大変か、経験上よくわかっているつもりだ。